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モヒカン故郷に帰る

★★★☆☆(3/5)

(C)2016「モヒカン故郷に帰る」製作委員会

映画評

『キツツキと雨』『南極料理人』で知られる沖田修一監督。2014年の『滝を見にいく』では、一般公募で集まったワークショップで選ばれた一般女性7人を起用したが、今回の『モヒカン故郷に帰る』も、まだ色のついていない出演者の切り取り方がとても魅力的だった。

モヒカン頭のバンドマン・永吉(松田龍平)は、恋人・由佳(前田敦子)の妊娠・結婚を報告するため、7年ぶりに故郷の広島県・戸鼻島へ帰ることに。だが、バンドをするために広島を離れて東京に出ていったにも関わらず、中途半端な状況の永吉に、父親・治(柄本明)は激怒。親子喧嘩がはじまってしまう。一方で母親・春子(もたいまさこ)は、家事もろくにできない由佳に料理などを教えていく。そんな中、治のガンが発覚し…。

中学で吹奏楽部の顧問を務める治。教え子の生徒たちは、役者としては見ない顔ばかり。しかし、リアルな中学生ならではの初々しいやりとりが、広島弁特有の言葉のニュアンスと相まって、何ともユルくておかしい空間ができあがる。そのほか、撮影が行われた島の協力で集まったエキストラの人たちの地元感が、物語の世界観を形づくっている。

父親・治は熱狂的な矢沢永吉ファン。吹奏楽に、永ちゃんの名曲『I LOVE YOU,OK』をずっと演奏させてきた。母親・春子は広島カープファンで、特に菊池涼介選手への声援がすさまじい。ともに地元愛が強いからこそ、永吉の東京での不甲斐なさに、やりきれない思いがある。

序盤「年金や健康保険を今後払っていけるか」と心配する、永吉のバンド仲間。若者として夢を追いかけたい一方で、「将来どうなるのか」という不安が押し寄せる。また、治はガンでどんどん弱っていく。自分の老後の生活費、そして両親の介護。20代、30代にとってのシビアな現実問題が、軽妙なストーリーの中で、ズシりと重く感じる。弱り切った治と永吉のやりとりをみていて、実際に「自分ならどうするか」と考え込んだ。

監督/キャスト等

■監督:沖田修一
■出演:松田龍平/柄本明/前田敦子/もたいまさこ/千葉雄大
■配給:東京テアトル
■公開:3月26日

関連サイト(外部リンク)

http://mohican-movie.jp
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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。