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宅ふぁいる便 > 宅ふぁいる便エンタメ【トップ】 > 早川さや香のプロフェッショナルの唯言(ゆいごん)

〜濃く熱く、ひたむきに生きる仕事人に聞くライビング・メッセージ!〜
第6回 楳図かずお 氏(漫画家・マルチアーティスト)

よく死ぬこと=よく生きることだと言います。
各界の一流仕事人の人生観・死生観をうかがう連続インタビュー第6回目は、
日本で初めて「恐怖まんが」というジャンルを確立し、日本中の子供たちを震え上がらせ、PTAの目玉を剥かせた天才芸術家・楳図かずお氏の“唯言”をお届けします。

《唯言人》楳図かずお氏の半生

◇1936年、和歌山県・高野山にて生まれる。生後7ヶ月で、母にもたされた筆で図形を描き始め、父に村の伝説を聞かされて、自然や空想と戯れて育つ。
◇1955年、中学2年時の作品『森の兄妹』などが出版され、商業デビュー。大阪の貸本漫画で活躍し始める。『口が耳までさける時』『へび少女』などを発表し、少年少女を震撼させる。
◇1967年〜『猫目小僧』、69年〜『おろち』、74年〜『洗礼』等ヒットを飛ばし、76年〜『まことちゃん』で大ブレイク。“グワシ”は社会現象に。
◇1975年、SF大作『漂流教室』で小学館漫画賞を受賞。メディアの寵児として歌い、踊り、演じ、マルチアーチストと呼ばれる。その後も82年〜『わたしは真悟』、86年〜『神の左手悪魔の右手』、90年〜『14歳』など時代を先取りした作品を発表し、“預言者”と呼ばれる。
◇2008年、『おろち』が映画化。
◇2009年、8/20〜9/27 楳図かずお×現代浮世絵版画展を下北沢GAoh!にて開催 同じく9月〜、原作を手がけた舞台『漂流教室〜大人たちの放課後〜』よしもとプリンスシアターで上演予定!現在、小学館より『UMEZZ PERFECTION!』、小学館クリエイティブより『完全復刻版』を刊行中。
【オフィシャルHP】⇒http://umezz.com


◆出版社に「芸術的すぎる」と言われ、スランプに陥った高校時代

 僕は、戦後初のベストセラー漫画といわれる、手塚治虫先生の『新宝島』を小5のときに読んで、自分も作家になりたいと思いました。でも「筋」は書けないし、「絵」は手塚先生に似ちゃうし、早くからものづくりの苦しみを味わいました。中学校でも出版社に投稿したり、脱・手塚をめざして童画みたいなタッチを取り入れたり、試行錯誤していたんです。

 そんなある時、手塚先生ご本人にも、童画タッチの作品を送ってみたら、その直後の手塚作品に一部が取り入れられていたんです! デフォルメした「木」の描き方なんですけど、それまでの作品になかったタッチなので、ええ〜っ!?て思っていたら、後日談がありました。

 あの藤子・F・不二雄先生が、十代で手塚先生のお宅に見学に行かれたとき、壁に僕の絵が貼られていて、先生が「天才が現れた!」と鼓舞されたそうです。だから、その「木」の絵は、その時手塚先生のお仕事を手伝った、F先生が描かれたのかもしれない。あくまで推測ですけれどね。藤子不二雄A先生から後日談を聞いてすぐに、F先生は亡くなられましたが、ちょっとご縁が繋がったような、良いお話だと思っています。

 そんなわけで、高校生になってもひたすら描きまくっていたのですが、出版社に「絵が芸術的すぎる」って言われたり、漫画漬けで成績が下がって先生に説教されたりで、とうとう高校2年生のとき、「やーめた」と思いました。それからは音楽にのめりこむ日々を送っていました。

 ところがある日、修学旅行から帰った級友が「楳図くんの漫画が、熱海の売店で売られていた」って言うんです。僕は、乗り物がキライなので行かなかったのですが(笑)、「ええーっ」ですよ。漫画サークルの先輩が出版社に売り込んでくれていて、本人が知らないうちにデビューしていたの(笑)。そうして漫画に呼び戻されたんです。

序文

楳図かずお 1936年、和歌山県生まれ。生後7ヶ月で、母にもたされた筆で図形を描いていたという。

 幼いころ、楳図まんがを読んでトイレに行けなくなった人は、結構いらっしゃるのでは? 私(早川)がうっかり楳図シャワーを浴びたのは小学校2年生。近所の本屋さんで立ち読みしたら、腰が砕けた。それから毎日、怖くて怖くてやめたいのに、足が本屋へ…。

小2にして不眠症にもなった。『窓の外におばけがいるよ〜…』。母に助けを求めたいが、もしや、母にも“おばけ”が取り憑いていないか? 母親という、安寧の存在に恐怖を感じたのも、楳図ホラーの洗礼だった。

 「お母しゃんは、ヘビ女じゃないか!?」、とうとう母を指さして言った日、私はお尻が割れるほどぶたれ、本屋は出入禁止になった。しかし妄想は止まらない。夜は布団から両手を宙に突き出して、バリアを張った。

この結界が破れたら、自分も“おばけ”になってしまう…。そんな姿を暗闇で見て、母はキャッと叫んだ。小学4年生のとき、私は両親に遠くの田舎に連れて行かれ、楳図まんがとの蜜月は終わる。

 今は、夜の恐怖はすっかり忘れたし、妄想力もなくなってしまった。「楳図作品って、エロチックでもあったな〜」と思いながら頁を繰ると、恐ろしさより、懐かしさが先に立つ。しかし、どこかで、原始的な恐怖を忘れたくなくて、今も楳図先生に近づいていってしまうのかもしれない。

先生は読者を裏切らず、いつも「ちょっとフシギ」をサービスしてくださる。


唯言その一
◆これからの時代を生き延びるには……『日本人は、もっと“芸術”心をもったほうがいいと思います』(楳図かずお)...(次ページへ)


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早川さや香

早川さや香

富山県出身。東京学芸大学教育学部卒、コラムニスト。
著書に『Another Hero(小学館)』『一人前の仕事術(インデックスコミュニケーションズ)』など。

趣味の縁結びでは、20組以上の成婚を達成。最近、依頼が増えつつある結婚式司会業に備え、すこしお酒を自粛しボイストレーニングに励む日々。ブログはこちら