15人のおじさまと横十間川の小さな旅(和船乗船体験編)

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 船頭さんが櫓をこぐたび、木の軋むギィーッという音と、水を掻くチャプンという音が耳に心地いい。船の浮かんでいる横十間川の上はまるで東京23区内とは思えない静けさだ。

そんな中、和船ガイドをしてくださる船首のおじさまと船頭をしてくださるおじさまが会話を始めた。
「あそこに咲いてる花は、キョウチクトウだよね」
と言って、川べりの遊歩道に立つ木を指差す。
私もつられて見ると、綺麗な桃色の花をつけている。
「あぁ、そうだね。」
「あれはさ、大気汚染のひどいとこでも大丈夫なんだってね。だから川崎とか堺とか、工業地帯に植えるといいらしいよ。」
「前に香港でも見たな。」
「あれを植えて枯れちゃうところはよっぽどだよね。住まないほうがいい。」

 私は、「へー」などと頷きながら船の真ん中に座っている。なんだか、この人たちの親戚か、近所の子供になった気分だ。おじさまたちは、何となく私も巻き込みながら、好きなことを話している。

ふしぎと自然。ふしぎと心地いい。ふと横を見ると、犬と散歩している人が同じようなスピードで歩いている。小さな子を後ろに乗せた電動アシスト自転車は、軽やかに私たちを追い越していく。そんな景色の上に木の葉の影がゆらゆら揺れている。ギィーッ、チャプン、ギィーッ、チャプン。なんだか、ずっと前からこうだったような気がしてきた。

 江東区には、いくつもの川が縦横に流れている。徳川家康が作らせた小名木川、江戸時代に開削された仙台堀川、江戸城から見ると縦に見えるという竪川、横に見える大横川に横十間川など。

どれも江戸・東京の水運に欠かせない川で、江戸時代には、米や塩などの物資を千葉方面から運び、明治以降は工場への資材や製品の輸送にと活躍した。

 そんな川や東京湾で活躍した江戸和船の、動態保存と操船技術の伝承を目的として活動されているのが、江東区の「和船友の会」の方々。

この会は、1995年に江東区の呼びかけで元漁師や船大工、その他の方々が集まって創設されたボランティア団体で、ここ、横十間川親水公園での乗船体験や櫓漕ぎ体験などを、地域の子供達や訪れてくる人たちに無料で提供されている。

 そんなわけで、私も和船乗船体験をしようと訪れてみたのだ。