日本のモンマルトルって? 三大河川を跨ぐバスの旅(都バス東43系統編)

 バス旅をしようと決めたのには、2つの軽い理由がある。一つは、最近出ていた雑誌に素敵なバス旅のガイドがあったから。

もう一つは、同郷の小説家・西村健さんの作品『バスを待つ男』を読んでいたら、錦糸町や大塚あたりの車窓の風景がありありと見えてくるような気がして、私も久しぶりに東京の東側を地続きに町から町へと旅してみたくなったから。

そんなわけで丸の内北口のバスのりばに着くと、目の前には赤レンガの丸の内駅舎と、そこから伸びる2つの違う高さの高架、その上を走る東京の在来線やカラフルな新幹線が見える。そう、ここはまさに胸躍る旅の始まりの場所だ。

 ほどなく、1番のりばに東43系統荒川土手ゆきの都営バスが滑り込んできた。荒川土手なんて行き先のバスが、この最高にモダンな旅とビジネスの街から出ているという驚き。そこに惹かれてこの路線を選んでみた。
 3人だけの乗客の一番最後にステップを上がり、「一日乗車券をお願いします」と言いながら交通系ICカードを提示すると、運転士さんが手元で操作をしてカードをかざすように促される。料金の500円はカードのチャージ分から差し引かれ、電子音と共に目に見えない一日乗車券の情報がカードに書き込まれた。

 バスの乗客が少ない時、私は決まって一段高くなっている場所に座る。前輪の上の位置になる一番前の席か、後輪の上の二人掛けか、一番後ろの席だ。今日は一番後ろに座った。これで車内も車外も少し高いところから見渡せる。なんとかと煙は高いところが好きというから、座るときに少々恥ずかしい気もするが、好きなのだからしょうがない。

 バスはオアゾの後ろを回り込み、国道1号線に入る。高層ビルの立ち並ぶ街を左に見て、すぐに大手町停留所に止まった。乗客はなし。私はバッグからペンとノートを取り出して、感じたことや思いついたことをメモすることにした。