このエントリーをはてなブックマークに追加
クリックして拡大

ジャニーズの人気グループ、NEWSのメンバーである加藤シゲアキの同名小説を映画化した『ピンクとグレー』が2016年1月9日(土)に全国公開される。

人気絶頂のスター俳優・白木蓮吾(中島裕翔)が突然、自ら命を絶った。第一発見者は、彼の友人・河田大貴(菅田将暉)。順風満帆かと思われた白木蓮吾は、なぜ死を選んだのか。そして、彼から6通の遺書を託され、「この中から白木蓮吾にふさわしい遺言を選んでくれ」と最後のメッセージを受け取った河田大貴がとった行動とは。

キャッチコピーにもある「開始から62分後の衝撃」は、大げさでもなんでもなく、椅子からひっくり返るくらいのインパクト。芸能界をひとつの軸にして、真実と嘘が絡み合う世界に生きる若者たちの青春が描かれている。本作でメガホンをとったのは、行定勲監督だ。

「原作を読んだとき、加藤くんの作家としての本気度、覚悟を感じました。芸能界にはある種の虚構と真実が混沌としている。ただ、日本の芸能界の内幕を舞台にした作品は、薄っぺらく見られる怖さがある。なぜならその世界の真のトップにいる人たちは、表には出てこないから。ハリウッドはフィクサー、ボスが目に見える場所にいるので、ドラマチックで派手に(物語として)作ることができるし、だからこそ『サンセット大通り』(1950)のような作品もたくさんある。日本は、ひけらかさないということが暗黙の了解でもあります。だからこそ加藤くんに関しては、現役アイドルでありながら、自分も投影したようなこの原作小説を発表したことに驚きがあるんです」

芸能界の虚構。人間関係の嘘。そもそも、アイドルは偶像である。フィクションを演じなければならない。自分はいったいどんな存在なのか、という葛藤と迷走。白木蓮吾が、6通の遺書から「“白木蓮吾”らしい遺書」を他者に選んでもらうというのは、パブリックイメージにとって作り上げられるアイドルらしい場面である。彼が見ていたのは、華やかな色がついたショウビジネスらしい世界か、それともいろんなものを見失った灰色の世界か。

「そんな若い登場人物たちが青春の中でもがき苦しんで、いろんなものに抗っている姿が、やけにおもしろく感じるようになった。これはもしかすると、僕が歳をとったからかもしれない。落ちるところまで落として、そこから抜け出す彼らの姿を、僕自身、どこか達観して見ているところがある。以前、深作欣二監督に『GO』(2001)を観ていただいたとき、開口一番『いいシャシン(映画)だったよ』とおっしゃってくださって。『若いね、そこがいいんだ。君の若さは眩しくて、これで十分いい。でも僕が同じ題材でやれば、違う意味でおもしろいものになったと思うよ。俺だったらこうする、こうしてしまうと考えながら観た』と。大林宣彦監督にも同じことを言われました。あれから19本も映画を撮ったけど、今ようやく、深作監督が僕に言ってくださった意味がちょっと分かるんです」

映画の中で、菅田将暉が中島裕翔に対し「現実はどうなのか。あんなにキレイな話にされても」という台詞がある。これは、ある人物について触れた言葉で、そんな彼のことを、周りが「美化しているのではないか」と吹っかけたもの。にしても、ちょうど2005年に『世界の中心で、愛をさけぶ』を撮り、現実にはない美しい純愛のブームを作った行定監督が、まさか10年後にこの台詞を自作で言うとは。

「ひとつの自虐ですよね。正しいか間違っているかの話ではないですが、でも当時の僕は、あの形が正解だった。さまざまな意見を言われましたが、『何が悪いんだ』という気持ちがありました。俺にはそうにしか見えない世界があった。だけど今になると、そうやって苦言を呈していた先輩は、もしかすると現在の自分のように、映画や映画界の状況もまじえて見ていたのかも…と分かるようになったんです。今の若い人たちがチャンスを掴んで、少女コミックの映画化などに挑んでいますが、実は僕はそれらの作品を出来るだけ観ないようにしているんです。同じように苦言してしまうかもしれないから…(笑)。でもどこかで『僕はもうちょっと抗ったところがありますよ』と思う部分もある。『世界の中心で、愛をさけぶ』で先輩たちが、僕に対してそのように感じていたとするならば…という思いをあえて菅田さんの役にあの台詞に込めました。自分にとっての青春映画が変ぼうをとげているのだと思います。いろんな自虐的なネタが台詞として映画の中に散りばめられているので、細かく観て欲しいです」

◇映画批評はこちら
◇公式HPはこちら


取材/文・写真 田辺ユウキ(映画評論家)

The following two tabs change content below.
田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。