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珍遊記

★☆☆☆☆(1/5)

(C)漫☆画太郎/集英社・「珍遊記」製作委員会

映画評

頼むから続編は作らないでください。こういう“事故”があるから、「人気漫画の実写映画化は反対」という大して根拠のない意見が出てしまうのだ。

週刊少年ジャンプに連載された漫☆画太郎のギャグ漫画『珍遊記 ~太郎とゆかいな仲間たち~』の映画化。主人公の山田太郎役は、テレビドラマ『銭ゲバ』『ど根性ガエル』など、実写化不能レベルの伝説的漫画のキャラクターを任せられるのは、この人しかいない思える松山ケンイチ。『珍遊記』を実写でやるなら、確かに彼に勝負を託すのは妥当だろう。漫☆画太郎作品で象徴的な“ババア”は笹野高史で、「これはベストな配役」と期待が膨らんだ。監督は、『地獄甲子園』『魁!!クロマティ高校 THE MOVIE』の山口雄大なので、まあ分らないでもない。

それにしても、だ! もう、笑いのハードルが低すぎる。原作の世界観をそのままに下ネタづくしで攻めるが、観客をナメてるんじゃないかというくらい幼稚。原作はあの画の熱量もあって、キャラクターの動きに勢いがあったが、この映画は笑えなさすぎて話が止まって見える。コメディーになっていない笑いが流れを分断。ネットにアップされている身内ノリの数秒動画を延々と観せられている感じ。

傍若無人だった山田太郎が、立派な人間になるために僧(倉科カナ)と天竺まで旅をするロードムービーなのに、雑な笑いのオンパレードで、まったく旅になっていない。どういう脚本を書けばこんなの惨劇が生まれるのか(脚本家・松原秀はアニメ『おそ松さん』は最高なのに!)。ふたりが入ったラーメン屋の店主の体臭が臭いとか、どうでもいいことに時間を使い過ぎて、映画として魅せるべき演出をすべて放棄しているように思える。これでは、粘投している役者陣がかわいそう。キャラクターに艶が全然ないのだ。

映像加工も粗く、役者の生身の動きが全然生かせていない。カメラも、いったい誰の何を撮ろうとしているのか。映像としてどういうことを訴えようとしているのか、その意図がなさすぎる。

松山ケンイチ、倉科カナが立ち寄った村で出会うオタクの青年は、お笑い芸人・今野浩喜の本来のキャラがおもしろいのであって、この映画が引き出したモノではない。唯一の救いは、山田太郎の敵側で登場する藤本泉か。タンカを切る場面での首筋の血管がセクシーで、バキバキに加工しまくってスベっている本作において、実はそういう生々しさがもっともっと必要だった。

監督/キャスト等

■監督:山口雄大
■出演:松山ケンイチ/倉科カナ/溝端淳平/田山涼成/笹野高史/温水洋一/ピエール瀧
■配給:東映
■公開:2月27日

関連サイト(外部リンク)

http://chinyuuki.com
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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。