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961年に行われた“世紀の裁判”のテレビ放映の裏側を描く映画『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』のプロデューサー、ローレンス・ボウエン(写真左)が東京・ヒューマントラストシネマ有楽町にて、ジャーナリスト・野中章弘さんの司会のもとトークイベントを行った。

本作は、第二次世界大戦下のナチスの親衛隊の将校であり、ナチスによるユダヤ人絶滅計画「ホロコースト」を推進した責任者、アドルフ・アイヒマンの裁判を通し、その素顔を暴こうとするテレビマンたちの物語だ。

世界が震撼した戦犯、アイヒマン。ローレンス・ボウエンは「僕は彼が非常に複雑な人間だったと考えています」と語る。

「若い頃、セールスマンとして妻子と普通の生活を歩んでいたアイヒマンは、ナチのイデオロギーに共鳴した。ひとりの若者が、ひとつのイデオロギーに心酔し、非人間的なことを行ってしまう、一つの悲しい例だと思います。法廷での彼を見ると、『自分たちが信じていたもの、自分たちが行っていたことは正しい』『ユダヤ人は、非人間的な存在なんだ』ということを本当に信じていたのではないかと考えています」

第二次世界大戦中、ナチスがおこなった、約600万人にも及ぶユダヤ人の虐殺。2016年も日本では、ホロコーストを題材にした『サウルの息子』が公開され、多くの絶賛の声を集めている。ローレンス・ボウエンは「本作を製作した動機のひとつは、ホロコーストやそこで起こったことを忘れないために、この映画を製作しました。また、その裁判で、テレビマンたちが実は後ろで大きな活躍していた。これはまだ知られていない物語であり、新しい見せ方でホロコーストについて伝えたかったんです」と語る。

ナチス・ドイツが敗れてから、70年。その当時の社会背景、人間心理はどのようなものだったのか。戦争についてあらためて考える機会を、本作はあたえてくれる。

「人間性とは何か、ということを反映した作品。悪、暴力の本質について考えさせられるはず。後半のシーンで、あるジャーナリストが『もし朝起きて、皮膚の色や鼻の形で人を差別するような気持ちが少しでもあったらば、それはアイヒマンが感じているようなことを、あなた自身も感じ始めているのかもしれない』と言います。これは今を生きる我々にとって、非常に重要なメッセージ。世界では、宗教、人種差別に根ざした戦争や紛争が起きています。すべて今もまだ続いている問題でもあり、将来に向けて我々が対峙していかなければならない問題でもあります」 映画『アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち』は全国公開中
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取材/文・写真 田辺ユウキ(映画評論家)

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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。