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『告白』『白ゆき姫殺人事件』で知られる小説家・湊かなえ原作『少女』(公開中)が映画化される。時間をかけて書いていた小説が、誰かに盗まれてしまった女子高生・由紀。剣道の選手として将来を嘱望されながら、団体戦でのミスをきっかけに、いじめに遭っている同級生・敦子。闇を抱えた17歳の少女たちが、死への興味を膨らませながら日常を過ごしていく。

メガホンをとったのは、『しあわせのパン』『繕い裁つ人』などの三島有紀子監督。17歳という年齢が醸し出す、昔から変わらないもの。そして、時代とともに変わってしまったもの。繊細な年頃の普遍性と変化を描き出している。

「17歳という年齢は、自分勝手で、脆くて儚く、そして美しい。そして女性同士の関係性も、どの時代も大きくは変わらないと思うんです。ただ、コミュニケションツールに大きな変化があり、少女たちを翻弄しているように思います。SNS、メールや通話のアプリがまさにそう。もちろん便利だし、私も活用しています。ただ、自分の17歳の頃にそれらが存在していなくて良かったとも感じます。対話であれば表情や声で相手の気持ちを窺い知れますし、手紙でもその筆跡で伝わってきます。だけど、電子的なツールで例えば“嫌い”と言われてしまうと、情報がそれだけに限られてしまいがちで、思春期の年頃だと苦しくなってしまいますよね。生きている世界も狭いですしね」

由紀にとっては小説を書くことが、そして敦子にとっては剣道が、輝かしい青春の一ページになるはずだった。才能があった。しかし、大人、同級生らによって道が閉ざされてしまう。

「もがいて、もがいて、もがいた先に一番キラキラしたものがあると思います。いろんな悩みを抱えているけど、ひょんなことから“生きている瞬間”を見つけることができたりする。とは言っても、やっぱり人生は長い。キラキラした瞬間がずっと続くことはない。やっぱり息苦しいし、閉塞感がある。彼女たちを“籠(かご)の中の鳥”のような存在としてこの映画では描いてみました」

由紀と敦子を演じたのは、本田翼、山本美月。二人が浮かべる表情は、世の中への怒りや不満ともとれるし、将来への不安にも見えるし、または生きることへの諦めにも映る。アンバランスな佇まいが印象的だ。

「本田さんには、『由紀は周りを信じていない。理不尽なものに対しての怒りや社会は美しくない、汚いという思いを常に抱えて生きてほしい』などと細かく伝えました。一方で敦子に関して、山本さんには耳元で囁くように演出し、少しずつ感情を高めてもらいました。じっくりと浸透させて欲しかったんです」

本田、山本はともに20代半ばの大人の女性だ。17歳とは離れている。三島監督は「だからこそ、由紀と敦子を演じることができたのだと思います」と語る。

「彼女たちが今の年齢で抱えているものを(役として)表現することも必要です。しかし、17歳という一度通過した年齢だからこそ、客観的な目をもって演じてもらうことも大切でした。それができたから、二人の中に由紀と敦子が憑依した。(劇中で)山本さんは、稲垣吾郎さんとご一緒する機会が多かったのですが、稲垣さんが先日テレビ局で偶然、山本さんと出会ったとき『(現場とは)全然違う人だった』と驚かれたそうです。それだけ、撮影中は役になりきっていたのではないでしょうか」

由紀、敦子は自分の世界を持っている。みんな、違って当たり前。十代の学校生活では「みんなと同じじゃなきゃいけない」という恐れがある。ちょっとでもはみ出してしまうと、すべてから疎外されるような世界だ。しかし、三島監督は「100人いたら、100人の感じ方をして欲しい」という。この映画が、若い人たちの背中を押してくれるきっかけになるかもしれない。

映画『少女』は全国公開中
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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。