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大阪市が助成し、石井裕也監督(『舟を編む』)、横浜聡子監督(『俳優 亀岡拓次』)、三宅唱監督(『PLAYBACK』)などを発掘してきた「シネアスト・オーガニゼーション大阪(以下、CO2)」。13回目を迎えるCO2の助成3作品が、第12回大阪アジアン映画祭(2017年3月3日-12日)でプレミア上映される。そこで第13回CO2作品の『おっさんのケーフェイ』谷口恒平監督、『蹄(ひづめ)』木村あさぎ監督、『可視化する心たち』主演・吉田龍一に話を聞いた。

『おっさんのケーフェイ』は、元プロレスラーを名乗る中年男性と少年の交流を描く。人生がうまくいかない大人と、特にこれといって夢がない子どもが、どのように成長を遂げていくか。谷口監督は「失敗した人や敗者に対する、社会の不寛容さに抗いたいと思ってこの映画を作りました。(タイトルの)“ケーフェイ”とは、プロレスファンは口にしない隠語です。みんながためらう、重い言葉。でも、僕はそういう部分がおもしろい気がしました。協力をしていただいた道頓堀プロレスの皆さんも『そういう台詞が出るなら、協力はできないです』と、ぎりぎりまでやりとりがありました。ケーフェイという言葉を使うからこそ、プロレスのロマンを壊さないように注意しました」と制作背景を口にした。

『蹄』は、「私、“ウシ”なの」という言葉を残して消えた女性の姿を追う、男の物語だ。“ウシ”の正体を突き止めるまでを、余白をもって展開させていく。木村監督は、「幼い頃から自分の体へのコンプレックスがあり、この映画ではそうやって変容していく姿について表現しました。自分自身の“形”への疑いを考えたかったんです。当たり前とされていることを、ただ受けいれるだけの人間にはなりたくない。イメージ映像的な映画にならないように気をつけたのですが、それでも先にご覧になられた方からはその指摘があり、悔やむところはあります。でも、そういったメッセージを少しでも感じ取っていただけると嬉しいです」と反省点も交えながら、作品に込めた意図に触れた。

『可視化する心たち』は、人間の心の声の具像化がテーマ。その実験に失敗した研究員たちの心理が絡み合っていく。吉田は、CO2の俳優オーディションを経て俳優特待生に選ばれ、主演を勝ち取った。「現場で、五十嵐皓子監督と意見の擦り合わせをしていきました。初日は特に掴めない部分が多くて不安があり、納得がいかないことが多かったです。でも、その撮影3日目のヤマ場で、監督から『私が思っている以上のものが出来ている』と言ってくれて、気持ちが軽くなりました。その言葉を信じてやっていきました。現場での空気感を大事にしながら、作品の本筋をぶらさないように気をつけました」と現場でのやりとりを振り返った。

CO2は、この第13回をもって大阪市による助成が終了することが発表されている。今後は、自主運営に切り替え、関西の映画産業の発展と充実を目指していくという。

映画『おっさんのケーフェイ』、『蹄』、『可視化する心たち』は第12回大阪アジアン映画祭にて2017年3月3日-12日の期間内に公開される
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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。