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文化庁の日本映画振興事業の一環として2006年にスタートし、中野量太監督(『湯を沸かすほどの熱い愛』)、松永大司監督(『トイレのピエタ』)、金井純一監督(『ちょき』)らを輩出した「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」。35ミリフィルムで撮影した短編という条件のもと、制作された2016年度作品が、2017年3月11日-17日にTOHOシネマズ日本橋(東京)、2017年3月18日-24日にシネ・リーブル梅田(大阪)で公開される。作品を手がけた5監督に話を聞いた。

金允洙監督の『白T』は、いつも愛用している白いTシャツを汚さないように過ごす青年が主人公。しかしある日突然、復讐代行屋と出会って、毎日に歪みが生じていく。「当初は復讐代行屋の男にリアリティを持たせようとしたのですが、あの存在は人間ではないと思ったんです。むしろ災害のような存在。人間の言葉で当てはまるようなキャラクターにしないように考えました。白のTシャツというのは、僕が白Tが好きで、汚れるのが嫌だったから。汚れるということを“罪と罰”のようにとらえて表現しました」

新谷寛行監督の『ジョニーの休日』は、35歳フリーターの男が、ハタチの彼女の家へ挨拶に行くと、実は二人の姉が元彼女だと発覚する話。「あまり主人公の魅力を明確に描きたくなかったんです。観ている人が、彼に共感をして欲しかったから。彼と関係を持っている3人の姉妹の言葉で、その人間像に寄っていくようにしました。主人公は、彼女たちと出会うことで、過去がフラッシュバックしていく。でも結局、何も変わらない。(元彼女がみんな姉妹だったことを)開き直らせるよりも、変わらない姿を見せたかったです」

目黒啓太監督の『パンクしそうだ』は、結婚式とプロデビューのオーディションがバッティングして、気持ちが揺れ動く売れないバンドマンの物語。「最初は『いくらなんでも結婚式を天秤にかけるのは…』と思ったのですが、彼にとってはこれが最後のチャンス。オーディションに行くことが、最大の成功なんだと感じてもらえるように、脚本を考えました。花嫁にはきっちり『才能ないよ』と言わせたり、彼を応援する者は決していなかったり、そうやってできるだけ重みをつけるようにしました」

薮下雷太監督の『戦場へ、インターン』は、映画の現場で、一般車両の通行管理をしているインターンスタッフが、妊婦を乗せた車を止め切れず、撮影が中断するトラブルを映しだす。「もともとは、映画制作の裏側を舞台としたバックステージものの色合いが強かったのですが、そういった業界ものは話が狭くなるので、シナリオを直しました。その分、もっと普遍性を意識して、出産という出来事を中心に持ってきました。出産と映画作りという、生みの苦しみがあるものを引っ掛けています」

吉野主監督の『SENIOR MAN』は、老人を苦しめる犯罪を取り締まるため、深夜パトロールをはじめるお爺さんのヒーロー映画。「僕自身がお爺ちゃんっ子なんです。色んな話を聞いている中で、今の社会で老人がないがしろにされている部分の多さに憤りを覚え、この映画を作りました。最初の脚本はもっとトンがっていて、姥捨山的な捉え方もしていたのですが、弱い立場である老人たちが必死にあがいているところをちゃんと描いて、伝えたいことを素直に伝えるようにしました」

今やデジタル撮影が主流となったことで、誰でも映画を撮れるようになった。しかし、ハードルが下がったことで質の薄いものが増えてきた印象だ。自主映画は、もう一度底上げに挑まなければならない。今回、映画の原点であるフィルムで撮影することの緊張感を味わった5人の今後に期待したい。

映画『白T』『ジョニーの休日』『パンクしそうだ』『戦場へ、インターン』『SENIOR MAN』はTOHOシネマズ日本橋にて2017年3月11日-17日、シネ・リーブル梅田にて2017年3月18日-24日の期間中に公開
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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。