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第69回カンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した『わたしは、ダニエル・ブレイク』(公開中)で、チャリティ企画が実施された。

本作は、心臓の病で働けなくなった59歳男性が、シングルマザーとその二人の子どもたちの交流を描く人間ドラマ。複雑な制度によって十分な援助を受けられず、生きることに悪戦苦闘する人々を、名匠ケン・ローチ監督が映しだす。

そんな物語に関連し、映画館での有料入場者1名につき50円寄付する「ダニエル・ブレイク基金」を常設するほか、家庭で余っている食べもの(缶詰)を映画館に持ち寄り、それを必要とする人たちに寄付する「フードドライブ」も実施された。

こういったチャリティ企画を発案した映画配給会社「有限会社ロングライド」の代表取締役・波多野文郎さんは、「チャリティや慈善行為は、莫大な資産を持つ個人や利益を得た企業だけが行うことではなく、『我々のような零細企業でも実践することができるのでは』という思いが常にありました」と、経緯を語る。

「1年半前、本作の脚本家ポール・ラヴァティから脚本が送られてきたのですが、その際、添えられてコメントに『今程、貧困が深刻化していることはこれまでなかった。過酷な社会の現実から抜け出せない人々について映画を多く作ってきたが、貧困が原因で飢えている人々を意識する事はなかった』とありました。完成した作品を観たときに、その言葉の意味するところが少し分かった気がしました。そして、日本でも同様な状況が日々深刻化していること、貧困の連鎖を少しでも食い止めようとする人々がいることを知ったのです。貧困研究をされている、日本女子大学の岩田正美教授が、貧困とは何かをシンプルに定義されています。『貧困と格差は異なる。貧困は許容できないものである』と。貧困は撲滅されるべく、最大限の努力がなされるものだと考えます」

「チャリティは、ある一つの形に限定されるものではなく、あらゆる形で実践が可能です。ほかの映画会社も、映画を通じてチャリティを行う機会が増えると素晴らしいと思います」と、業界全体での展開を期待する波多野さん。

「経済的な理由で教育を得られる機会を失われている子どもたちに何かできれば、と思っています。教育は個人や家庭の問題だけでなく、社会の未来に対する投資ではないでしょうか。また、一人でも多くの子どもたちに映画の楽しみも味わって欲しい。ロングライドはあまり子ども向け映画を手がけていませんが(笑)、ある日突然…ということもあり得るかもしれません」とこれからの取り組みに意欲をみせた。

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』は全国公開中
◇公式HPはこちら

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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。