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 柴又の駅に降り立つと、目の前にはこれでもかとフーテンの寅さんの世界が広がっていた。やはり・・・。

柴又に来ておきながら何だが、私はテレビで放映されている寅さんしか見たことがなく、特に好き!というような想いはない。柴又を訪れてみたのも、まだ足を運んだことがなかったのと、帝釈天や矢切の渡しなど面白そうな場所があるからであって、特に寅さんという要素がなくてもいいと考えていた。が、どうやらそういうわけにはいかないようだ。

 柴又の駅前広場には寅さんの銅像と、今年3月25日に除幕式が行われたばかりの妹さくらの像が、寅さんを駅に見送る形で設置されている。それだけではない、なんと生身の寅さんが「まったくヨォ、これじゃまたさくらにおこられちまうなぁ」などとヘラヘラしている。それを見て、周りの老若男女は大ウケ。写真もパシャパシャ撮られて、プチ握手会状態に。ん?

 よくよく見てみると、まあ当然ながらホンモノの寅さんではなく、そっくりさんだ。正直、帽子やベージュのジャケット、腹巻や革の四角いトランクといった小道具がそっくりなのであって、顔が似ているわけではない。ただ、話し口調が寅さん感を醸し出しているのかもしれない。目をとめないわけにはいかない。そのうち、なんでこの人はここでこんなことをしているのかと気になってきた。そこで、少し人が引いた瞬間に突撃インタビューを試みてみた。

「あのー、すみません。実は私、下町歩きの記事を書いているものなんですが、少しお話を伺ってもいいですか?」
「おう、物書き?そんな感じがしたんだヨォ。いいよいいよ、じゃ、ちょっとこっちへ来な」
と促され、広場の脇のベンチへと二人で腰掛けた。

「えっと、なんというか、ボランティアでなさってるんですか?」
「そうだよ!あんまり似てないけどな。本当は他のモノマネの方がうまいんだよ。ルパーンしゃんしぇい(三世)、とかな。けどヨォ、寅さん(渥美清さん)が亡くなった、忘れもしねぇ、平成8年8月4日の次の日からここに来て、勝手に寅さんやってんだよ。」

 なんだか深イイお話が出てきそうな展開だ。聞けば、現在「野口寅次郎」という芸名で活動されている芸人さんで、以前はNTTの関連会社に勤めるサラリーマンだったそう。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/