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古屋兎丸の同名漫画を、菅田将暉主演で映画化した『帝一の國』。「総理大臣になって、自分の国を作る」と息巻く高校生・赤場帝一が、「生徒会長を務めた者は、将来の内閣入りが確約される」というエリート校・海帝高校で、先輩たちの激しい政権闘争を目の当たりにしながら、野望実現の礎を築く学園コメディーだ。

メガホンをとったのは、『ジャッジ!』『世界から猫が消えたなら』に続いて長編3本目となる永井聡監督。「実際の事件をモチーフにした社会的な映画を作る監督も多い中、僕はその路線ではなく、ファンタジーを織り交ぜた“映画でしか許されない表現”をいつも目指しています」という永井監督。今作では、キャラクターの輪郭を際立たせるために、「かなり思い切ったメイクを施しています。アイメイクもばっちりやっている。まるで、宝塚歌劇のようなイメージ。もちろんそういった見せ方に対して怖さもありましたが、でも、映画はそれができる世界なので」と振り切ったキャラ作りでビジュアル面の魅力を生みだしている。

中でもインパクトが強いキャラクターは、やはり菅田演じる赤場帝一だ。永井監督自身「たくさんのキャラクターが出てくる中でも、好きなのは帝一」とお気に入り。「彼は、選挙戦で誰かを応援するけど、結局のところは自分のことしか考えていない。その気持ちが、逆に純粋に映るんです。純粋に自分の野心を達成したいからこそ、土下座もできるし、誰かのためにイヌのようにも動き回れる。『自分さえ良ければ何でもできますよ』というところが好き」とゾッコンだ。

学内の政権を奪取するため、どの先輩の側近になるかを考えたり、罠を仕掛けあったりするなどして、ライバルを出し抜いていく帝一たち。喧嘩が強い者、知力に長けている者がリードできる明快な世界ではない。「分かり合うとか絶対にないですし、相手を認めることもない。『クローズZERO』のように強い・弱いの順番が決まっていたら白黒がはっきりしますが、そうもいかない世界です」

映像業界に身を置き、映画だけではなく、CMも数々手がけてきた永井監督は、「僕も、帝一のように立ち回り方がうまいタイプ」と笑う。「人を怒らせないように、反抗する」と処世術を語るが、一方で「映像の世界も闘いです」とぶつかりあってきたことも。

「『あの監督にはいつも良い企画がたくさん回ってくる』と悔しい気持ちを抱くことも、当然あります。だけど、そういう勝ち負けの世界を経験するのは絶対必要。例えば“お受験”は叩かれることも多いけど、しかし一生懸命勉強して、受験をする人たちを否定するのは、僕はできません。自分が社会に出たとき、まず痛感したのは『すべては平等じゃないんだ』ということでした。そういう社会で(他者から)一歩でもリードするために、学生時代から受験などで闘うのは、決して悪いことではないと思います」

「この映画を何度も観て欲しいので、いろんなキャラクターに感情移入できるようにしています」という永井監督。「特に、野心のためなら何でもやる帝一のクズっぽさを楽しんでください」と個性的な主人公に一票を投じた。

◇映画『帝一の國』は全国公開中
◇公式HPはこちら

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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。