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上戸彩、斎藤工を迎え、お互い結婚相手がいるにも関わらず、不倫愛に流されていく男女を描いた人気ドラマの映画化『昼顔』(2017年6月10日公開)。ドラマに引き続きメガホンをとった、西谷弘監督にインタビューを行った。

2014年のテレビ放映時、その禁じられた深い恋愛に、魅了される視聴者が続出。許された関係ではないものの、それでも愛を貫く姿が綴られた。だがこの映画では、どれだけ美しく見える愛であろうとも、不倫である以上、そこには必ずシビアな現実があり、そして何より悲しい想いをしている人がいるところに着目している。

「ドラマは“不倫、されど純愛”という形でしたよね。不倫に“良い匂い”をさせようとしていました。でも、時代の風潮を意識したとき、映画では同じことをやってはダメ。紗和(上戸)に対して、奪われる側の痛みをちゃんと知ってもらおうと思いました」

象徴的な場面がある。北野(斎藤)との不倫愛の末、夫、友人、住む場所、すべてを失って、海辺の町で暮らし始める紗和。しかし、小さなコミュニティでは彼女が都会で犯した“罪”は、すぐに多くの人の耳に入ることになる。そして、こんなことを言われる。「不倫って、恋じゃないでしょ」。

「僕はその台詞が好きなんです。この言葉をどう受け取るかによって、それぞれの(恋愛に対する)経験値が見えてくる。男女間でも違ってくるし、映画に登場する人物それぞれの価値観の違いも、台詞へのリアクションによって分かるようにしています。序盤、離婚して一人で暮らすことになった紗和に対して『女の人ってもっと現実的だと思った』というバイト先のオーナー(平山浩行)。寡黙だが、何かを抱えている40代の女性料理人(黒沢あすか)。『不倫は恋じゃない』と紗和に厳しい目を向ける、20歳のバイト店員(萩原みのり)。彼女たちそれぞれを通じて、観る人は、自分の恋愛観と改めて向き合ってみてはいかがでしょうか」

一方で、やはり恋愛は、一度大きな流れに乗ってしまうと、抗いようがないものでもある。自然発生する感情だ。それを意識づけるのが、風景の描写や、自然に関連した言葉などである。この映画にはさまざまな形で印象的に「自然」が映しだされる。紗和の家の前や、終盤のとある場面に出てくる電柱の「海抜」のプラカード表記は、海の底に眠っていた紗和の恋愛心の浮き上がりを想像させる。北野と再会するきっかけを作る講演会チラシのタイトル「あなたのそばの不思議な生きもの」は、危険だと分かっていながら不倫愛に溺れる男女のことでもあるし、逆に他の異性には見向きもせず真っすぐに一人への愛を貫く人間を指しているようでもある。

「まさに、そうですね。紗和、北野が水辺でホタルを採集しますが、あれは儚さを表しています。また水をモチーフとして多く描いているのは、やはり生命の源であるということ。すべての始まり、ということで、人生をやり直そうとしている紗和に重なる部分があります」

この映画で、紗和と北野の恋は一つの決着を迎える。きっと賛否両論があるだろうし、またあって然るべき。西谷監督もそれを望んでいるようだった。

「ありがちな終わり方にはしたくなかったんです。上戸さんは、紗和の立場に立って(ラストについて)考えると、『切なさも含めて複雑ですが、しかし紗和として与えられた人生をやっていきます』と言ってくださいましたし、斎藤さんは、『抵抗はありません』とおっしゃっていました。終盤は、台詞の一つ一つに、静かに悟らせるものがある。二人の覚悟を決めた芝居を見て欲しいです」

映画『昼顔』は2017年6月10日より全国東宝系にて全国公開
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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。