このエントリーをはてなブックマークに追加

 ガラス窓の向こうには、宿泊客の洗濯物が干されている小さな庭と薄暮の空。外はぐっと冷え込んできたようだ。話をしながら奥様と私は上着を膝にかけ、ご主人は台湾で買ってきたばかりという凍頂烏龍茶を淹れてくれた。

まるで雪の日のように辺りは静まり返り、話をする私たちの声は木造家屋の天井に吸いこまれていくよう。白熱灯のあたたかな光が、頷いたり笑ったりする私たちの顔をぽおっと照らしていた。なんだろう。こんなシーンが前にもあったような気がする。

そう思った途端、お二人の話を聞きながら私の頭の片隅には、ヒマラヤの4000mを超える山小屋で、夕食前にシェルパたちとカードゲームをした日の映像が再生された。

長く過酷なトレッキングの途中に、まるで家族と過ごしているかのようにはしゃぎながらホッとした、あの優しい時間。きっといつまでも忘れない、旅の途中のスウィートホーム。


 蔵前駅から徒歩1分の場所にある『東京ひかりゲストハウス』は、客室4つ、ベッドは17人分、1人1晩2800円から泊まることができる外国人旅行者に人気の小さなゲストハウスだ。

人気の理由は、なんといってもこの愛らしい佇まいだろうと、私は思う。というのも、昭和21年に建てられた木造家屋を、元々美術教師でもあった奥様が1年をかけてリフォームされているのだ。

水周りにタイルを貼るのは朝メシ前という感じで、壁をつけたり、棚を作ったり、DIYという言葉では収まらないような作業をされたのだが、壁のツートンの塗り分けや古い建て具の使い方など、どれも優しい表情で調和がとれている。

そこに置かれている不揃いのクッションや小さな緑の鉢なども、見ているとゆるゆる心がほぐれてくるよう。元は大工が住んでいたからか、4メートルもある天井の高さも解放感をもたらしてくれるのかもしれない。

The following two tabs change content below.
諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/