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 撮影スタジオに入ると、目に飛び込んできたのは白地に赤い水玉模様のフリフリワンピース。その隣のラックにもずらりと甘ずっぱい衣装が並び、ラジカセとか赤い公衆電話といった懐かしい小道具たちも控えている。

き、来てしまった。腰の引けている私を「どうぞ」と促してくれるカメラマンの武田さん。この方も、いったいどんな方なんだろうか。マルベル堂のウェブサイトの写真の印象は、クリームソーダを手に写っていて、ちょっと、なんというか、軽めの印象だった。

40過ぎた私を快く撮ってくれるのだろうか。いや、それよりも何よりも、私は自分をどのテンションに持っていけばいいのか、この期に及んでまだ分からないでいる。私に全く芸能の経験がないのであれば、「スターになりきるぞ」なんて素直に意気込んで行けたのかもしれないけれど、なまじ細く長く芸能の世界に身を浸している私。

スターになりきる、という行為が、なんとも気恥ずかしく思えてしまうのだ。それに、スタジオでの撮影はある程度知っているけれど、プロマイド撮影は全く知らない。この取材を自ら組んでおきながら、どの自分を今日の自分に据えればいいのか迷いまくりだ。困ったな~と思いながら、とうとうスタジオにたどり着いてしまったのだった。

 日本唯一のプロマイド専門店であるマルベル堂は、大正10年に浅草で創業。以来、映画俳優や歌手、アイドルや著名人など、およそ2800人のスターたちを撮影しプロマイドを出版してきた。

浅草は、江戸時代から最大の歓楽街として隆盛を極めており、明治~大正~昭和と劇場や映画館が林立。観劇したファンたちは、興奮冷めやらぬうち、その足でプロマイドを買いに走るため、マルベル堂は夜の10時や11時まで店を開いていることもあったそうだ。

こうして、マルベル堂のスタジオでプロマイド撮影をしてそれを販売することは、スターたちのステータスとなり、その売上ランキングは人気のバロメーターでもあった。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/