このエントリーをはてなブックマークに追加


東京駅丸の内北口の1番バス停留所から、都バスのS-1という新しい路線に乗り、日本橋では、ルネッサンス様式で建てられ「東京都選定歴史的建造物」に指定されている三越の建物を眺め、神田ではそばを啜る。

上野ではもうじき咲くであろう桜に想いを馳せ、合羽橋では新生活に向けて容赦なくお買い物をし、雷門では車窓から高みの見物を決め込む。そして最後に両国では、老舗のちゃんこ鍋に舌鼓を打つ、という、非の打ち所のない、我ながら惚れ惚れするような下町旅を提案できるはずだったのである。

それが、丸の内北口の停留所へ行ってみると東京都交通局からの「お知らせ」と書かれた一枚の紙が貼付けられていた。そこには、3月11日に起こった震災の影響により、3月23日からこの路線を運休する、と書かれていたのだ。

ほほう、と、携帯電話で日付を見てみると、今日は3月23日。なんと、お目当てのS-1はまさに今日この日からの運休なのであった。

最初の地震からは、間もなく2週間が過ぎようとしていた。

それはあまりにも大きな出来事すぎて、ここであれこれ書くつもりはないのだけれど、収まったかと思うとまたやってくる余震にゆらゆら揺られつつ、テレビから流れてくるニュースに心を痛め、計画停電や原発や放射性物質の入った水などについての情報に頭を痛めていた。

被災地の方々を思うと軽々しく口には出せないが、それでも慣れない事が連続する日々に、少々疲れを感じ始めていたのは事実だ。日常生活においてきっと他にも支障が出てくる事があるだろうとは思っていたが、なるほどこういうこともあるか。と、ひらひら風に揺れる「お知らせ」を見ながら立ち尽くしてしまった。

S-1は都バスが2008年4月に華々しくデビューさせた観光路線バスで、車体もシルバーで可愛らしく、乗り心地もいい、そして、普通の路線バスと同じ200円で夢の下町を見物できると言う、下町好きの私としては必ずいつかは乗らなくてはならないバスだったのである。そして、今回の取材はこれでバッチリ!だったはずなのである。

The following two tabs change content below.
諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/