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地下鉄の入谷駅から階段を上がると突風に体がぐらりと揺れた。寒いわけではないのだが、思わずジャケットのジッパーを首の辺りまで引っ張り上げる。それでも隠しきれない顔面の皮膚から、木枯らしがヒリヒリと水分を奪っていく。

あーあ。こうやって冬が来るたびにお肌に年輪が刻まれてしまうのだ、などと思いつつ、立冬を翌日に控えた11月6日、私は秋葉神社で行われる「火渡り神事」へと向かった。遠くではいくつか消防車のサイレンが響いていた。

ところで秋葉神社、という文字を見たら、アキバ系の神様でもいるの?と思ってしまいたくなる方もいらっしゃるかもしれない。でも、その予想はそう遠く外れてはいない。実はこの秋葉神社こそが、世界に名だたる電気街、アキバこと秋葉原の地名の由来となっているのだ。

とは言っても、今は台東区の入谷駅の近くにある秋葉神社。もともとは鎮火社と言って、現在のJR秋葉原駅構内に位置する場所に鎮座していた。鎮火社とは、その名のとおり火を沈める神様を祀っていたもので、1000軒以上の家を焼いた明治2年暮れの大火を受けて、明治天皇が広大な野原が広がっていたこの地を延焼を防ぐ為の火除地とした際に、置かれた神社である。


それがいつしか、火防(ひぶせ)の神として人気を集めていた遠州の「秋葉三尺坊大権現」を祀る「秋葉社」と呼ばれるようになって、まわりの野原はそのアキバさまの原っぱ、「秋葉原」と呼ばれるようになったのだそうだ。

ちなみにアキバと言うのは、下町訛りであり、当時の江戸っ子たちには「あきばのはら」や「あきばっぱら」と呼ばれていたそうだ。それを知らない官吏たちが「あきはばら」と読んだことから、現在の地名となっている。それが現代、更にひっくり返って「アキバ」の名で親しまれていると言うのは、下町好きとしては大変興味深いことだ。

そして、明治21年、鉄道線の延長により秋葉の原は払い下げられ、秋葉社は現在の入谷へと移動してきた。その後、名称も秋葉神社へと変わったのだそうだ。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/