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9〜10月は、ふしぎを発見するお仕事のおかげで、
すっかり宇宙に魅了されていた。

ただでさえ普段から「星降る寒い夜、すぐそばで見上げた星座について神話交じりに説明されたらイチコロです」などとのたまっている私である。あるいは、谷川俊太郎の「20億光年の孤独」で万有引力というその言葉の引力に強烈に引き寄せられっぱなしの私である。

取材中、通いなれた下町にも天文台があった、
それがしかも、江戸時代のことだった!

なぁんて知ってしまったらもう、一目その場所を見てみなくては気がすまなくなってしまう。そこで、今回はまず「浅草天文台跡」である、鳥越まで足を伸ばしてみた。

伸ばしてみたのはいいけれど、江戸通りと蔵前橋通りの交差する場所に天文台に関する小さな案内板が設けられているだけで、予想通り当時をしのばせるような建物などはなかった。

案内板によると、ここには人工的に築かれた9.3m程の山があり、その上に約5.5m四方の天文台があった。天文台までは43段の石段を上るようになっていたらしい。

葛飾北斎の描いた浮世絵「鳥越の不二」には、天体の位置を測定する奇妙な器具「渾天儀」を備えた天文台越しにすっくと伸び上がった富士山が描かれている。すっかり平地にならされたその場所に立って、「ここから伊能忠敬も星を観測したのかしら」と首を後ろにぐいっと反らせてみると、雑居ビルや電線に囲まれたささやかな空には、今にも雨粒を落としてきそうな鋼色の雲が立ち込めている。

それでもなんだか嫌な気がしなかったのは、恐らく、ここに住んでいる人たちの逞しそうな気質が、当時のそれと似ているかもしれないと思えたからだろう。

ここは、いつも賑やかな浅草橋のおもちゃ問屋街と、あの荒っぽい男たちの祭りが行われる鳥越神社を擁する町なのだから。などと思っているうちに、頬に小さな雨粒がひとつ。長い夏から秋を飛び越して一気に冬になだれ込んだような、この冷たい空気に、思わず身震いしそうになる。

こりゃあいけない。次の場所までは少々歩くはず。先を急ごう。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/