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 下町の春を知らせるものはたくさんあるけれども、きっとこれは外せないものの1つだろう。亀戸天神社の藤の花。亀戸の天神様は、東京一の藤の名所として名高い。故にこの時期は、「藤まつり」と称して、境内とそこに続く参道もちょっとしたお祭り騒ぎで、春の高揚をいっそう盛り上げてくれる。

 露店の建ち並ぶ参道を歩いていると、とろりと光るりんご飴の輝きや、ソースの焦げた香ばしい香り、みずみずしい熊本産のオレンジなどを「これは、おまけ、これも、おまけ、おまけ、おまけ、おまけ・・・」と、延々とおまけしている気前の良いオジサンの声などが、目と耳と鼻からひっきりなしに情報伝達してくる。情報を受け取った私の脳は、空腹中枢へ信号を送り、私の行動を司る。一度は天神様の赤い鳥居をくぐってみたのだが、くるりときびすを返し、視界の隅で私の心をとらえていた白いのれんをくぐった。江戸そば、にし田さん。 

 そば屋さんに入ると、あれば大体、鴨せいろや鴨汁、といった、鴨のおそばを頼むのが私の常なのだけれど、せっかく天神様の前で天神と名のついたそばを提供されているのだからと、今回は「天神そば」に心を決めた。メニューにある「クリーミーな味わいのお蕎麦を」という解説が非常に謎めいている。

 お店のお姉さんに「注文お願いします」と声をかけると、「ただいまー」と言って私のもとへ。「えーっと」と、私が言うか言わないかの内に、お姉さんが「テレビに出てるでしょ?」と言った。そばを注文する事しか頭になかった私は、なんのことか一瞬、さっぱり分からなかった。恐らく2秒くらいしてからはたと気づき、「あ、え?時々・・・」とモゾモゾ答えていると、またお姉さんが間髪いれずに仰った。「あれ、ふしぎ発見!」と。そこまでくると、とぼけようがない。「あ、ご存知ですか。ありがとうございます」とテレビの人の声になって答えた。油断禁物である。


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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/