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 高くなる空。日に日に寒さも本格的になってきた、そんな折、深まる秋の絶景を見に行こうと都会仕様の防寒服姿で降り立ったのは、JR駒込駅。そう、東京の公共交通機関の顔とも言える山手線の駅のひとつ・・・なのだけれど、実は私、駒込駅を利用するのは初めてである。そんな未知の東京都心部で手軽に紅葉狩りをしてしまおうというのが今回のコンセプトだ。

 早速、駅北口を出て本郷通りを北へ向かうと、道は緩やかに右にうねりながら下ってゆく。坂の途中には、太田道灌を連勝に導いた妙義神社の案内が立っていたり、そびえ立つ煙突と立派な唐破風を備えた銭湯がどっしり構えていたり。その辺りから徐々に人懐っこい下町風情が顔を出し始めたかと思うと、坂を一番下ったところには「しもふり銀座商店街」という、美味しそうな名前の商店街が伸びていた。かつて霜降橋という橋があったことに由来する名前で、その橋の下には、本郷通りを横切るように谷田川という川が流れていた。今は暗渠になってしまったためにその流れを目にする事はできないが、この谷田川は染井墓地などを水源地とし駒込や根津を流れて不忍池に注いでいた川。どおりでここらは東京低地の下町風情がサマになっているわけだ。

 更に本郷通りを進むと、今度は大炊介坂(おおいのすけざか)を上り始める。すると、驚いた事に今度はみるみる山の手の雰囲気が漂い始め、間もなく、大きな石垣の廻らされた本日最初の目的地、旧古河庭園へと到着。ううむ、なんという景色の変化。未知の土地・駒込、なんだか想像以上に興味深をそそる場所ではないか。私は静かな胸騒ぎを感じながら、門をくぐった。

 中に入ると、更に世界が変わる。見上げるばかりのヒマラヤスギの木立の奥に、逆光に映える美しい石造りの洋館が建っていた。そう、実はこの旧古河庭園、おとぎ話に出てきそうな洋館と、その前に広がる西洋庭園。更に、この時期紅葉に染まる日本庭園まで備えていると言うのだから、1粒で3度美味しい場所なのだ。

 ちなみに、江戸時代の地図で旧古河庭園の位置を確認してみると、「戸川播磨守」と書かれており、幕末はその下屋敷として使われていたことが分かる。明治に入ると、外務大臣として辣腕を振るった陸奥宗光の所有となり、その次男・潤吉が古河財閥の創始者・古河市兵衛の養子に入った際に、古河家の所有へと変わっている。現在のような形になったのは、大正6年のことで、古河財閥三代目当主・古河虎之助(市兵衛の実子)によって洋館と庭園が造られたのだそうだ。


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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/