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 10月。神無月。全国の神様が出雲に集結されるので、他の地域はどこも神様不在。
お江戸にある神社も、ほとんどお祭りらしいお祭りが催されません。

ただ、十月晦日なんて古い言葉があり、このひと月はまた特別な意味を持ってきました。というのも戦前までは、たいていの商家の主人たちはべったら市(10月20日のえびす講)の頃までにこの年度の勘定を整理して、恵比寿・大黒の祭壇に御神酒を捧げて次の年の利益を祈願したのだそう。同時に、小僧は中僧に、中僧は番頭にと使用人たちを昇格させ、慰労した時でもあったのだとか。

 実は、この感覚が残されているのが、最近私がすっかりはまってしまっている歌舞伎の世界の、顔見せ興行。

「すべて芝居にあづかるものは大晦日に同じく、十月晦日に事を極め、十一月朔日を以って元朝のこゝろになせり。」

と、東都歳時記に記されている通り、毎年10月に一旦区切りをつけて次の1年間の顔ぶれを決め、11月にはオールスターそろい踏み。10月はまさに、次の1年をどう過ごすかの鍵を握る、大事な時なのです。

 そんな期間、私は何をしていたのかと言うと、2週間ほど海外ロケで寒い土地に行っていました。何かに区切をつけるでもなく、いつものまま、というより、いつもよりもちょっと忙しいくらいの10月です。次の仕事のことを考えながらバタバタと帰国すると、その少し前からウチに来ていた両親が、私とはちょっと違った時間を生きていて、温かい食事を用意して「おかえり」を言ってくれました。

 いつもロケの後は、1人でせっせとロケ中の衣類の洗濯やら、荷物の整理やら、部屋の掃除、ベッドリネンの取り替えや冷蔵庫の中身の調達に奔走するのですが、この時ばかりは夢のような心地。食卓につくなり、湯気の立つ鍋のふたを開け、並べられたさらに次々と食事が並びました。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/