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7月17日、東叡山寛永寺のお膝元、上野では東京の早いお盆にあわせて様々なイベントが行われていた。その中でも前から一度見てみたいと思っていたのが、灯籠流し。通常、川施餓鬼などと言ったりするのだけど、不忍池は川ではなく池。はて?池施餓鬼とは聞いたことがない。不忍にて偲ぶというのも、まるで冗談のようだ、などと思いながら、浴衣を着たカップルの後ろ姿に吸い寄せられるようにして、不忍池に浮かぶ弁天堂へと向かった。

不忍池の灯籠流しはもともと、戦没者慰霊のために始まったのだそうだ。今年は震災で亡くなった方の為にもよろしかったら、とのアナウンスがあったため、全く要領を得ないながらも、受付に僅かなお布施をし、芳名帳に「震災犠牲者の皆様」というのと、自分の名前を書いた。

てっきり、この時に受付から灯籠が渡され、そこに再び何かしらを書き込んだり載せたりし、自らの手で不忍池に流すのだと思っていた。が、芳名帳に名前を書いて「ありがとうございます」と言われたっきり、妙な間があるばかりで何も起こらない。尋ねると、後は主催の下谷仏教会の皆さんが全部やって下さるのだそうだ。船から灯籠を流すことまで。あらま。

と言う訳で、灯籠を自分の手で流すつもりでいた私は、すっかりやることをなくしてしまった。あとは見物人に混ざって、灯籠の光に目をやればいいだけなのだが、それにはまだ一時間以上もの時間がある。はて。と思案したものの、すぐに、「まっ、こういう時には、下町のご隠居気分でゆったりと時の流れを楽しめばいいのかね」と思い至った。

まずは、ベンチに腰掛け、浴衣の帯の間から浅草で買ったばかりの安い扇子を取り出し、仰ぎながらぼーっとする。不忍池の蓮は幻想的だ。人の賑わいが、少しだけ遠くなって、また近くなった。こういうのを、人心地が付くと言うのかしら。なんて思っていたら、どうしても思い出してしまう人がいる。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/