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 新宿駅に降り立った。若い女性が私の前を猛然と走り抜けたかと思うと、別の女性に追いつき携帯を持っていない方の手でいきなり髪の毛を引っつかんだ。

ええ?!一瞬、何が起こったのか分からず、ドラマの撮影でもしているのかと思ったが、辺りの様子からしてそうじゃあないらしい。「やーめーてーよ!」と髪を引っぱられた女性も携帯を振り回しながら応戦している。私はあまりに驚いてしまい、逆に歩みを止めることが出来なかったが、どうやらその後は口喧嘩に発展していたようだった。いや、さすが新宿。私が普段なるべく通らない様にしている町。

他に乗換駅の候補があるなら、多少遠かろうと迷わずそっちへ行く。単に人が多くて疲れるからなのだけど、こんな光景を見せつけられると、それ以上に、なにか人を本能むき出しに行動させてしまう魔力が渦巻いているからかも、という気がしてしまう。

 そんな不夜城の本丸、歌舞伎町の入り口から新宿2丁目方面へと向かう。靖国通り沿いには、無数の看板が折り重なる様にせり出して、車や道をゆく人たちに絶え間なく主張してくる。そして、こういう場所には決まって漂っている、この下水のようなニオイ・・・。そう思いながら眉をひそめていると、いつしか、それがソースの焼けるこうばしい香りに変わってきた。複雑な心境。でも、ああ、後ろから甘いカステラの香りもやって来る。

 そう、今日は十一月の二の酉。新宿、花園神社では酉の市が行われている。花園神社が近づくと新宿の街も露店が立ちならぶ祭の風景へと変わり、靖国通りもいつもとは種類の違う賑わいだ。

とはいえ、大都会の真ん中ともなると、人出と人の種類も違う。3年前に訪れた浅草の鷲神社の酉の市では見当たらなかった、会社帰りの背広姿やこれから夜の蝶になると思われる女性達。学生服や子連れまで様々。

苦手な人ごみの中、避けたり止まったり追い抜かれたりすることにイライラしないように気を付けながら、6時20分、花園神社に到着。鳥居から続く参道にも露店と人がぎっしりだ。


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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/