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なんとか目を覚ましたのは、午前4時45分。
いよいよこの日が来た。集合時間まではたったの45分。
さあ、急いで準備だ。

顔を洗って水を飲み、全身に日焼け止めをすり込んでから、お湯でゼラチンをふやかした。それを器ごと鏡の前に持ってゆき、結い上げる髪の毛に塗り付けていく。

初めてのことで手際が悪いせいか、塗ったそばから固まってしまい、うまく結い上げられない。が、時計をみるともう時間がない。ええい!と、そこそこの所で切り上げ、新品、洗濯したての半股引やダボシャツに袖を通す。

町会の半纏を羽織って自転車に飛び乗った時には、集合時間の5分前だった。

神酒所へ着くと、婦人会の人たちが握ってくれたシャケのおむすびを掴み、
右手と口で割り箸を割って、左手に持ったわかめのお味噌汁をすする。
じんわりと体温が上昇。

するとそこに、「おう、今日は半纏着てるじゃねぇか!」と声がかかった。

神酒所(各町会に祭り期間中だけ設置され、神輿などを置く神聖な場所)設営も見てみたくて、3日前から毎日顔を出させて頂いていた私は、始めの頃は紅一点、珍しい者をみるような目で見られていたが、友人のT君が色々な人に紹介してくれ、お昼のお弁当を一緒に頂いてしまってから、徐々に睦会(有志による祭りの実行委員的なもの)のお兄さんたちとも目が合えば笑いあえるようになった。

神輿本番の今朝ともなると会う人会う人に、

「やっと担ぐ気になったか!」
「いつものカメラはないのかぃ?」

などと声を掛けて頂けたのだ。
それだけでちょっと胸が詰まりそうになるけれど、元気に返事をした。

「もっちろん、今日は担がせて頂きますとも!」

間もなく神輿は連合渡御の集合場所へむけて出発した。

それにしても下町は凄い。神酒所の設営には、町会長や総代が過不足ない指揮を執り、睦の若者達も指示されるまでもなく自発的に資材を倉庫にとりにいったり、人の足らなそうな所に走っていったりする。

どこにも野暮な説明がいらない代わりに、
辺りには冗談や笑いがこれでもかと飛び交っていた。

鳶のおじさんが時々激しい怒号を響かせてはいたが、いつの間にか誰かがちゃちゃを入れ、それもまたすぐに笑いに変わってしまう。柔軟で強い結束だ。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/