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2012年02月23日 配信

『キツツキと雨』(公開中)は、「南極料理人」(09)につづいて長編映画二作目の監督作品だ。小さな山村にゾンビ映画の撮影隊がやってきた。デビュー作で撮影に四苦八苦する新米監督の幸一(小栗旬)。ひょんなことから無理やり手伝わされる羽目になった林業に長年従事する克彦(役所広司)。二人のぎこちない交流が始まり映画の撮影が進むのだが─。心地よい流れの人間ドラマが展開する。

(以下、沖田修一監督)


─林業と映画の仕事、共通点が多く
朝が早い。雨が降ると休み。組とか現場って言う。一見かけ離れているように思えるけど、林業と映画の仕事には意外に共通点が多いなって思ったんです。この撮影隊は、ゾンビ映画を撮る。構想の段階では時代劇とかいろいろ考えたんですが、日本映画でゾンビって無理やりでB級映画の匂いがして、物語の雰囲気にあっているんじゃないかって気がしました。役所さんを起用したのは「がまの油」(2009年 主演:役所浩司)を観たとき、ひょっとしたら役所さんは変なのが好きなんじゃないか、この作品も面白がってやってくれそうだなって思ったのがきっかけでした。

─リアリティを求めたお風呂のシーン
役所さんと小栗さんが演じる木こりと新米監督がお互いに気を使い、近づいたり離れたりする。お風呂はそんな感情が表れているシーンになったと思います。でも後で聞くと、役所さんも小栗さんも大事なものを隠すためにあんな動きになったそうです。それというのもお風呂の撮影では普通、入浴剤を入れて濁らせたり、煙で湯気を表現して白くしてごまかすんだけど、今回は何もしていないんです。僕が「水は透明なものだ!」って変にリアリティを求めたために…苦労されたそうです(笑)。

映画の冒頭に人の名前が出てきたり、音楽で映画が始まるのも好きじゃなくなってきて、だんだんあまのじゃくになってきている。SE(効果音)は好きなんだけど、音楽を入れるとうるさくなっちゃう。最近は音楽は要らないって感じます。脚本を書いているときに、このシーンは音楽押しだなって思ったら、このシーンは要らないんだって思うようにしています。だから僕にはロッキーみたいな映画は作れないんです。

─監督っていう仕事、現場にいると良く分からない
前作「南極料理人」(2009年)では右も左も分からずやっていました。最後の方になると役者さんに向かって何も言えなくなり、演出するのに苦労したんです。そんな状態でも撮影が終わってある俳優さんに「また呼んでよ!」って声をかけられたことが嬉しくてよく覚えています。

自主映画とは違い、誰かからお金を貰って映画を撮るっていうことは苦労が多いと思います。現場慣れしているスタッフがいて、なんでこの中心に俺がいるんだろっていう違和感を覚えたりすることがありました。今でもよく分からないところがあるんだけど(笑)。そういう雰囲気が出れば良いなって思いました。自分のイメージを現場が超えた時は、監督をやっていて楽しい瞬間ですね。いろんな人と絡みあって、予想以上に膨らんだときは「儲けた!」って思います。


◇沖田修一
1977年生まれ、埼玉県出身、日本大学芸術学部映画学科卒業。

『キツツキと雨』は、全国公開中
◇公式HPはこちら



1月23日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員