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2013年11月22日配信

女優としての活躍が期待される人気ファッションモデル・吉倉あおい、『誰も知らない』の若き実力派・柳楽優弥を迎えた映画『ゆるせない、逢いたい』(公開中)。ひかれ合いながらも、あるきっかけですれ違いが生じた17歳の女子高生と古紙回収業の青年。孤独を感じた青年は、ある夜、想いをぶつけるように彼女を襲ってしまう。恋人関係から一転、被害者と加害者になってしまったふたり。本作は、そんな彼女たちの距離間にできた歪みを、若者の目線に立って見つめる青春映画だ。



メガホンをとったのは金井純一監督。2012年には短編『転校生』を製作。あの映画もまた、クラスで居場所がない少女と、ひとりの転校生の心の距離に迫っており、10代のナイーブな心情を鋭く描いた快作だった。

実は、『ゆるせない、逢いたい』と『転校生』は同じロケ地で撮影したんです。プロデューサーも同じで、『ゆるせない、逢いたい』の方が先に準備していました。10代の女の子にしかない一瞬の表情、うつろいやすさ。つまり、あの時期にしか撮れない女の子の様子を、ふたつの作品に続けてこめることができました」

母親の愛情を感じながらも、しかし悲しい出来事を経験し、過度な干渉を受けて感情が抑えきれなくなる姿。「どうしてあんなことをしたの」と加害者の男性に詰め寄りながらも、しかし「好き」という想いも複雑に交差するところ。ヒロインの少女像は、男性監督によって組み立てられたとは思えないくらいだ。

「少女を描く上で、リサーチというほどではないですが、何となく見ていたのが一般の女子高生のブログ。いろんなものを読んでいました。ブログって、10代の子たちがすごくセキララに本心を語っているんですよね。僕には分からないような感情をくみ取ることができる。『どうしてそんな行動をとるんだろう?』と感じたり、そういうところに描きがいを持ったり。いろんな変化があるけど、でも、彼女たちには確かにブレていない部分もある。『ゆるせない、逢いたい』の取材や、『転校生』が上映されたときに、『どうしてそんなに女性の心が分かるんですか』とよく言われたんですけど、『いえいえ』と思うんです。理解できないから探って、その行動に疑問を持ち、いろいろ考える。そうやって少女像を作りあげていきます」

本作は、主演を務めた吉倉あおいの効力も非常に大きい。今後、女優としてかなり期待を抱かせる存在だ。

「彼女のキラメキがこの映画の核になっています。『転校生』の少女たちもそうですが、スクリーンで見るとより魅力が増す。表情を(カメラで)追いかけたくなるような、そんな存在感を持っている」

金井監督は、期待の監督を次々と育て、ひとつのムーブメントを起こしているENBUゼミナールの出身。「ENBUの監督たちとは良いライバル関係。みんな、自分にしか撮れない映画に取り組んでいる。僕は、人間ドラマにこだわりがあります。複雑でデリケートな感情を、役者さんたちに表現してほしい。今回が商業デビュー作ですが、果たしてどれだけこのステージで闘えるか、自分でも楽しみです」



映画『ゆるせない、逢いたい』は11月16日より全国順次公開
◇公式HPはこちら



取材/写真・文 田辺ユウキ(映画評論家)


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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。