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2013年01月21日配信

人気グループ・EXILEのメインテーマ「Love」「Dream」「Happiness」を、演劇を通して伝えるパフォーマンス軍団・劇団EXILEの鈴木伸之が初主演を務める映画『アラグレ』(公開中)。

ロングヒット作『桐島、部活やめるってよ』で脚光をあびた彼が今回熱演する役は、荒くれ者たちがしのぎを削る激戦地・六本木で、男気と腕っぷしでサヴァイヴする若者・氷室星哉。かつて属していたグループの先輩が逮捕される火種つくって以来、ケンカに明け暮れる刹那的な暮らしの一方で、そのときの苦い思い出を引きずってやり切れない気持ちを抱え続けている。

「この映画には『ハンパな生き方してんじゃねえ』というメッセージがこめられていますが、星哉はまさに全力で生きようとしている。あれだけ激しい生き方をしていると、きっとおじいちゃんになるまで、生きてはいられないと思うんです。だけど、若いエネルギーを全面にだして、今を生きようとしている姿は共感できる。自分にリンクしているところもあります」

鈴木伸之は小学生から中学2年生まで野球に打ちこみ、ピッチャー、ショートという花形のポジションで活躍していた。だが、あるとき肘を壊してしまう。それでも、手術を受けるまでのあいだ投げ続けてしまい、その結果、軟骨がすり減ってなくなり、投げられなくなって野球を断念。「あまりにもつらくて、野球と距離を置く時期があった」という鈴木伸之の青春は、決して輝かしいものではなかった。

「そういう挫折があったからこそ、氷室星哉を演じることができたのだと思います。劇団EXILEに入ったのも、もともと歌のオーディションに落ちたことがきっかけ。でも、『レッスンを受けてみないか』と声をかけてもいただき、お芝居のことなんかまったく分からないまま、稽古、オーディションを重ねていったんです。とにかく必死でした。まさに星哉のように先のことは考えられなかった。挫折続きの自分も、“今”しか考えられなかったんです」

野球を諦めた時期のことを、鈴木伸之は「ターニングポイント」と語る。「今の医療をもってすれば、完全とはいえないまでも肘は回復していく。ただ、心のどこかに『野球は、もういいや』という弱い気持ちがあった。キツい練習をしているときは、この苦しさが30代、40代になっても延々と続くものだと思っていました。野球を辞めたあと、道を外れかけたこともありました。たくさんの人に、迷惑をかけました。だからこそ、『ハンパな生き方してんじゃねえ』というメッセージは自分に響きます。まだまだ若造ですが、それでも人生が折れた感覚があった。でも今は『失うものはないから、だったら思いっきりやって、どんどん恥をかいていこう』と考えられるようになったんです」と、どこか晴れやかに話す。

劇団EXILEをプロデュースするHIRO(EXILE)の「親孝行しろよ」の言葉が心に残っているという鈴木伸之。

「そのときは、あまりその言葉の意味を意識していなかったけど、最近ようやく分かってきたんです。今まで親には、良い報告をしたことがなかった。でもこうやって映画に出演させていただき、ようやく親孝行をできはじめた気がします。これからも、まわりの方々を喜ばせるために挑戦し続けていきたいです」


映画『アラグレ』は公開中
◇公式HPはこちら



取材/写真・文 田辺ユウキ(映画評論家)


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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。