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5月15日、大阪市内で「歩いても 歩いても」是枝裕和監督、出演の阿部寛さん、田中?平くんが出席してマスコミ会見が行われた。


―良多の小さいところ、好きです。自分も一緒だから

 最近はコミカルで不思議な役どころが多い阿部寛さん、今回「歩いても 歩いても」ではどこにでもいるような平凡な息子役を演じた。「良多(役・阿部寛)は本当に普通で、小さい奴なんですよ、最初、お話をいただいたときは正直、僕でいいんですか?と思いました」しかし、撮影前、監督と膝をつきわせてホン(脚本)をしっかり読み込む時間を作ってもらうなかで、自分にそっくりで親しみがわき、役に入り込むことができたという。また「阿部さんとセミを取り合ったのが楽しかった」(田中くん)のように、共演の樹木希林さんや、夏川結衣さんとともに、本当の家族のように触れ合え、それが絶妙な間合いの家族の描写を可能にしたようだ。


―母親、父親がいつのまにかおばあちゃん、おじいちゃん。

『誰も知らない』(’04)でカンヌ国際映画祭史上最年少の最優秀男優賞に輝いた是枝裕和(これえだひろかず)監督が今回描くのは、ある夏の日のある家族の何気ない日常だ。 淡々と描かれる日常だが、交わされる言葉の端々に母と子の関係、父と子の関係、夫婦の関係、親戚との関係などさま要素が絡まりあい、人間関係の複雑さ、難しさを描き出している。製作のきっかけになったのは、監督自身の体験だった。


―久し振りの実家の風呂場で、剥がれたタイル、付けられた手すりを見たとき、ほったらかしにしていたんだなぁ、時間が経ったんだなぁと感じました。

 「久し振りに向き合う時間ができたんですよ」離れて暮らしていた母親が入院した時、向き合う時間ができた。しかし(余命が長くなく)母親との別れを感じたとき、ほったらかしにしていて申し訳ないと思った。その後亡くなる母親。その思いは高まりこの思いをなんとか形にしたい、そうしないと先に進めないと思い、今回の製作を決意した。


―トウモロコシは食べられない?!

 「寿司と豚の角煮がおいしかった」(田中くん)のように家庭料理がたくさん登場する。里帰りしたときに食べきれないほどのごちそうを用意して待ち受ける母親。精一杯のおもてなしの場面だ。なかでも印象的に登場する料理がある、トウモロコシのかき揚げだ。「田中くんはトウモロコシ食べれないんだよな」と監督。是枝監督の母親の実際の得意料理だそうだ。ひとつの出来事が非常に細かに丁寧に描かれ、それが全体として繊細なドラマを構成しているようにみえる。


―好きなんですよね、この歌が

挿入歌として一度だけ登場する歌♪街の明かりがとてもきれいね〜で始まるブルーライト・ヨコハマ、1969年発売のいしだあゆみさんの大ヒット曲だ。 「みなさん(映画タイトルを見ると)一歩、一歩、いろんな経験をしながら時を刻む人生の様子と重ね合わせてくれているんですが・・実は♪歩いても 歩いてものフレーズが大好き、これをタイトルにして映画を撮りたいと思っていたんです」と語った。昭和と平成とが入り混じった実家の懐かしい雰囲気、じゃまくさそうでいて精一杯のもてなしで出迎える母親の姿。普段接していると気はずかしてくて言えない、遠くなると寂しい、そんな何気ない普通の親子の姿。これら描かれる情景は、誰もが自分の経験と照らし合わせずにはいられない。この映画をみて「まだ間に合う」そう思える人はどれぐらいいるだろうか。

(写真/文 羽渕比呂司)


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