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2014年03月10日配信

『鴨川ホルモー』『プリンセス・トヨトミ』など関西×摩訶不思議ワールドで知られる小説家・万城目学の原作を映画化した『偉大なる、しゅららぼん』(2014年3月8日公開)。滋賀県を舞台に、琵琶湖の神秘的なパワーを得ながら永らえる一族の存亡危機、そして若き後継者たちの闘いを笑いをまじえて描く物語だ。

メガホンをとった水落豊は、『犬とあなたの物語 いぬのえいが』で知られ、今作が初の単独監督作。これまで大手企業のCMを職人的に次々と手がけてきた。



「CMは、常に“新しいもの”を15秒、30秒の短い時間の中で詰め込む作業になります。そして伝えなければならない部分を強調する。そういうところは、これまでの経験が役に立つことがありました。というのも、原作のおもしろい要素をすべて描こうと思うと、映画の尺には収まりきらなくなる。だから『どこを削り、どこを強調させるか』をまず考え、『このエピソードを引っ張れば(お客さんに)うまく伝わるんじゃないか』と試行錯誤して作業を進めていきました。とは言ってもやはりCMとは仕事に関しては同じではない。映画ならではのおもしろさを常に追い求めていました」

万城目原作の世界観がフォーマットとして敷かれていることもあって、「この物語が比叡山が舞台とかだったら、おどろおどろしく、険しい映像を撮らなきゃいけないんだろうけど、万城目さんの原作はとてもリアリティーがあって、その中にフィクションを交えて伝えているから、画の部分に関しても『ここで撮ればいいんだ』と誘導されるように、悩まず撮影を進めることができました」と作品のイメージがしやすかったという。

大きなストーリーの流れが生みやすかった分、細かいところでの“遊び”をたくさん散りばめており、実はそこがひとつの見どころだったりもする。例えばアクションシーンにしても、CM業界にも映像面で強い影響を与えた『マトリックス』や、『エヴァンゲリオン』の超有名な台詞、さらに不思議な能力を使用する際に頭が割れるような音が鳴り響く描写は『ドラゴンヘッド』を連想させたり、名作のパロディー的なネタがたくさん配されている。

「観れば観るほど、いろいろ気づいてもらえると思います。自分としてはあまり意識していないのですが、万城目学さんと歳が同じ(1975年生まれ)だし、映画も同じものを観て育っているはず。おもしろいと思うポイントもDNA的に近かったりして、だから、原作を読んでそれを映像にする際、そこで加える多少のアレンジは、やはりどこか僕らが観てきた作品を連想させるものになるのかもしれません。万城目さんもそれを観て『すごく楽しかった』とおっしゃってくださったので、安心しました」

原作の世界観を大事に膨らませ、アレンジもして映像化に挑みながら、「やっぱり滋賀県の方々の協力なくして、この映画はできあがらなかった」と語る水落監督。

「みなさんきっと大変な作業をしながら協力してくれたと思います。おかげで僕らはストレスなく撮影ができました。そういえば、主演の岡田将生君、濱田岳君と地元のお好み焼き屋に行ったとき、『この町にスターが…!』という熱い視線を感じて。でも、普通はどんな場所でも『サインください、握手ください』の騒ぎになるのに、すごく静かなんです。で、お好み焼きを食べ終わってお会計をすませたら、皆さんがこちらにやって来て(笑)。食べているところは邪魔してはいけない、ということだったんでしょうね。だけど、滋賀での映画製作はそういう丁寧な気遣いがたくさんあったんです。自分にとっても忘れられない撮影になりましたし、本当に感謝しかないですね!」



映画『偉大なる、しゅららぼん』は全国公開中
◇公式HPはこちら


取材/文・写真 田辺ユウキ(映画評論家)


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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。