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オリバー・ストーン監督「ブッシュ」辛口インタビュー

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 前アメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュと名門一家を描いた「ブッシュ」が公開される。“世界でいちばん有名な大統領は、世界でいちばん寂しい男だった”という「人間ブッシュ」を浮き彫りにし、赤裸々な人間関係が暴かれる・・・映画詳細はこちら>>


─オバマは改革を進めているが・・・

[写真クリックで拡大] オリバー・ストーン 1946年生まれ。タクシードライバー、セールスマンなどさまざまな職を転々とし、67年〜68年にかけて、ベトナム戦争に従軍。帰還後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。

「ブッシュ」監督のオリバー・ストーンは、「プラトーン」「7月4日に生まれて」「JFK」などが代表作、アメリカ、戦争、政治といったテーマを深く痛烈に描く作品が多い。

Q この映画を作った理由は平和を求めるからですか?
A 私がこの映画を作った理由は、ブッシュという人間に焦点を当てるためです。もっと大きなスケールでいえば、米国について、米国という帝国について、他の国に土足で入り込むという軍の傲慢さを前提とした風潮、そういったエゴについて描きたかったのです。暴力、欲望、利己主義についてです。ブッシュは大きな問題ですが、ブッシュをとりまく世界はより大きな問題です。我々が今、どこにいるのか、今でも彼の作った政策の上で我々は生活しているのです。オバマは改革を志しています。彼は知的で、考える人間です。しかし、彼はまだシステムの中にいます。良いことを言っていますが、まだ、この帝国に大きな変化は見られません。私たちは傲慢さをおさえ、考え方を変えなくてはいけないのです。


Q 日本では自国の現職総理大臣の映画を公開することは大変難しいのですが、アメリカで現職の大統領の場合は、そういったタブーはないのでしょうか?
A 基本的にないです。でもハリウッドスタジオはどこも興味を示しませんでした。この映画は香港、オーストラリア、ドイツ、フランスから出資されて作られたんです。

Q どうしてですか?
A まずは問題視されうる題材だったので怖かったのでしょう。2番目には彼が現役の大統領だということ。もしもテロ事件などがあれば、国の状況が大きく変わります。経済破綻なども起こることは誰も予測できませんでした。これらがスタジオが懸念した原因です。映画を作るときには、ある程度、時事に合わせなくてはなりません。世の中は常に変化していますし、環境は一定ではありません。だからコメディだとかミュージカルなど、影響のないものが多く作られるわけです。でも、この作品を作らなくてはならなかったのです。なぜなら、ブッシュは私にとって、とても重要でした。考えてみてください。彼は世界を変えたんです。戦争の恐怖、アフガニスタンの戦争、イラク…。彼が作った政策はいまだに世の中に影響を与えているのです。私はそのことに動かされ、早く作らなくてはと焦っていました。彼は大統領になってすぐ戦争を始めたのです。彼は考えません。あの戦争は合法な戦争ではありませんでした。彼は嘘をついたのです。



─エール大学でブッシュと机を並べた?!

[写真クリックで拡大] マーティン・スコセッシに師事し、1978年「ミッドナイト・エクスプレス」でアカデミー脚本賞を受賞。本作は「JFk」「ニクソン」に続き、アメリカ大統領をテーマにした3本目の作品となる

Q エール大学で実際にクラスをともにしたと聞いたのですが、会ったのですか?
A 1965年に同じ大学で、一年目が同じクラスでした。私は理由があり、大学を中退し、ベトナム戦争に行きました。彼は大学に残りました。我々は違う環境にいましたね。彼にはお金があり、私は育ちはいいですが、地位も名誉もないし、両親も離婚していました。全く違う世界の人間でした。


Q 本作を見るとブッシュを可哀想にも思うのですが、それは狙いですか?
A いいえ、私の狙いは違います。私は彼を軽蔑しています。彼はこの国をダメにしました。でも、私はドラマティスト(ドラマを製作する人)で、プロのドラマティストです。ですから、いかなる感情があったとしても、彼が何を考えているかを知るためには、彼の目線から作らなくてはなりません。ブッシュは自分の言葉で自分自身の首をしめるのです。人は彼に好意をもつかもしれません、しかし彼は情けないです。左から右へと間違いを犯し、利己主義の固まりです。彼は猛烈な性格で、攻撃的です。それらを映画の中で全て見るでしょう。しかし、私はそれを私の考えで編集しませんでした。私の声は聞こえないでしょう。人は私がこういう人間なので、彼を鋭く攻撃すると思っているようですが、「ニクソン」という映画を作ったことを忘れています。あなたは「ニクソン」を見ましたか?それとも若すぎて見てない? (答:見ました)同じです。ニクソン本人に感情移入したでしょう!? なぜなら私がニクソンの目線からあの映画を作ったからです。私の父はニクソンのようでした。


Q 父と子の関係が重要だったわけですね。
A 父と子、ブッシュにとっては最も重要なことでした。父ブッシュはすばらしかったですし、スポーツ,学業、兵役中のヒーローぶり、政治家、オイル事業での成功などを含め、多くを達成した男です。その父に対して息子は憤慨していました。なぜなら、その全てにおいて、息子はおとっていたからです。そして、その息子が犯した最も大きなミスが、自分も大統領になれると思ったことです。


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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員