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テレビCMを打たないのはお金がないから〜「わたし出すわ」森田芳光監督インタビュー


 高校時代を過ごした故郷・函館に帰った摩耶、突然、友人たちの前に現れ「わたし出すわ」とお金を差し出す。戸惑いながらも、お金を受け取った友人たちは…、摩耶は何のために…、そのお金は・・・映画詳細はこちら>>



 森田芳光監督は、1981年に落語家の生活を描いた「の・ようなもの」で監督デビューして以降、「家族ゲーム」「バカヤロー」など、その時代の風刺の効いた作品を多く手がけてきた。本作のテーマは「お金」だ。


1950年東京生まれ。「(ハル)」以来、脚本・監督の完全オリジナル作品としては13年ぶり。

「僕は、メディアによって人間は、変わるって思っているんです。映画『(ハル)』の時はパソコン通信だったけど、今は、ネットで株の取引ができるようになった時代、みんなのお金の価値観は変わってきているって思っていて、これを題材に映画を作ろうって思ったんです。」

 物語のヒントになったのは、今も続く中学生の同窓会(=クラス会)での出来事がきっかけだという。

「クラス会に行くと、いろんな人がいて、成功している人もいれば失敗している人もいる。中学の時は、一緒に机を並べて勉強してたのに(笑)。無農薬野菜を作っている農家もいる、また一方で、土地を貸してそれで月何千万って収入を得ている人もいる。大地主なら、その農家に土地を貸してやって無農薬野菜をいっぱい作らせればいいんじゃないかって思ったんですよ。本人には言わないけど(笑)。」


主演は小雪さん。単独主演としては本作がはじめてという。

 物語では、小雪扮する主人公の摩耶が、東京で稼いだお金を持って、高校時代までを過ごした函館に帰ってくる。そして友人たちの前に現れ、夢や希望を聞き出し、「わたし出すわ」とお金を差し出す。受け取った友人たちは、その大金をどう使うのか、そのお金で幸せになれるのか、それぞれの人間性を浮かび上がらせることになる。

「お金を出すっていうのは嫌味がある行為なんだけど、しかも綺麗で、背が高いとくれればなおさら。だけど小雪さんはそれがない。ミステリアスな存在感、それがこの映画にはまった。函館は、空の綺麗なところが魅力ですね。どこか空虚な雰囲気も好きです。」

 映画にちなみ、これまで一番お金を使ったことは何か尋ねてみた。

「競争馬を買ったことありましたね。共同購入だけど。一時は良かったんだけど、今は全然お呼びじゃないですね(笑)。あと、映画撮るため家を担保に入れて3千万借りたことがあります。わたし出すわは、私に出した(笑)!」

 本作の映画プロモーションでは、テレビCMを打たない手法をとるということで一部で話題となった。これは、ラジオ、雑誌の広告媒体としての価値は急落、代わりに安くて効果の見えるネットが急進している。マス4媒体(ラジオ、雑誌、新聞、テレビ)といわれるうち落ち込みが一番低いテレビでも、多額の費用がかかる上、趣味の多様化や録画機器のCM飛ばし機能等の影響で、マス広告の効果が疑問視されるようになっている。このような状況と関連があったのだろうか。

「ただ、お金が無いからですよ(笑)。テレビCMはたくさん打たなきゃ意味がない。そういう意味では正解ですよ。だから、それを宣伝に使えって言ったんですよ。でも誰かが格好つけて言いたがるんですよね。普通に、誰かお金出してください、それでCM打ちます、そうすりゃヒットします、って言えばいいのに(笑)。」

 お金の使い方を通して本当の幸せとは何かを考えさせられる。脚本・監督を手がけた完全オリジナル作品としては13年ぶりとなる森田芳光が監督、小雪が主演の「わたし出すわ」は全国公開中だ。

◆関連情報…私生活でも、お金とどう向き合っていくか考える〜「わたし出すわ」主演の小雪さん舞台挨拶で発言



[取材:10月5日 大阪市内]
写真/文 羽渕比呂司


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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員