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2011年04月28日 配信

角田光代原作のサスペンス小説『八日目の蝉』が映画化された。成島出監督は「孤高のメス」「ラブファイト」、「クライマーズ・ハイ」(脚本)などを手がけてきた。

『八日目の蝉』は、不倫相手の妻に生まれた子どもを誘拐した野々宮希和子(永作博美)、その希和子に育てられた恵理菜(井上真央)の二人の女の物語。4年後、希和子は誘拐犯として逮捕され、恵理菜は実母の元に戻るが、ふつうの生活は望めず心を閉ざしたまま大人になってしまう。ある日、恵理菜は、妊娠していることに気づく。相手は希和子と同じく家庭を持つ男だった。恵理菜は過去と向き合うために、かつて希和子と暮らした小豆島へ向うが、そこである重大な真実を知ることになる。
(以下、成島出監督)



大学も出たけど立ち止まって回りをみたら、一体どこに希望があるのか。これは日本を象徴している。はっきりしない政治家、子が親を殺し、親が子を殺す。豊かといわれている国なのに事件が多い。何処に幸せを求めればいいの、希望の光は何処にあるの。(原作者の)角田さんの中にこの怒りがベースにあったと思う。僕もそれが原動力になった。これは前作「孤高のメス」のときと一緒でした。

原作もテレビドラマ版も希和子に同情的だったんです。でも、映画では突き放した感じにしないと届かないと思いました。希和子は犯罪者。作り手が同情したらダメ。許されざるものとして描かないといけない。演じる側も「かわいそうな女」っていう演じ方をすると絶対にダメ。お客さんが希和子のことをかわいそうって思ってくれるのは結構ですよ。だけどどんな理由があっても人の赤ん坊を盗むことは許されてはいけない。でも最後は、恵理菜の希望で終わりたかった。そして恵理菜を想う希和子、そんなことを思いながら撮りました。

希和子役の永作博美さん、恵理菜の井上真央さんや、ルポライター役の小池栄子さんとか、テクニックでできる役ではないんです。全身でぶつからないと届かない。永作さんは希和子を演じきって抜け殻になる。ルポライターは、ずけずけと近づくと思ったら、おどおどした振る舞いをする。小池さんは、最初はこの二つは同居できないって悩んで悩んでました。普段の演じ方、これまでの演じ方だと届かないってことを身をもってわかってくれたんです。すばらしい女優さんたちで映画にできたのは良かったっなって思っています。

こだわったのは、思わず盗みたくなる赤ちゃんの笑顔ですね。それがダメだと基礎が崩れちゃうので、丁寧に撮りました。いろんな現場にベビーベッドを持っていって、赤ちゃんの調子のいいところを見計らって撮りました。今回は全編フィルムで撮ったので、結構回しました。数時間分のフィルムの使ったと思います。4歳の子の方も集中力は続かない。昔から映画界では子役と動物には勝てないっていうんですけど、まったくその通り。

永作さんにも子役の赤ちゃんと同じ月に生まれた子どもがいるんです。どこが限界なのか、母親として赤ちゃんの扱いをわかっている。永作さんも「もし母親になってなかったら、ぜんぜん違う希和子になっていたと思います」って言ってました。

希和子が薫にきれいなものをいっぱいみようって言って、4年間それを見続けてしまう。大きくなって小豆島に旅をして美しい風景を見るんだけど、最後の最後に見るのが希和子の愛。どんな美しい風景よりも美しいのは人の心。最後にはそれが届けばいいい。安直なハッピーエンドではないんだけど、閉塞感の中で、希望を感じ取ってもらえればと思います。

映画『八日目の蝉』は、4月29日(金)より全国公開される。
映画詳細はこちら



3月8日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員