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2011年08月02日 配信

台本やナレーションを排除した“観察映画”と呼ぶ独特の手法でドキュメンタリーを制作。選挙活動の舞台裏を描いた「選挙」、精神病棟にカメラを向けた「精神」などで国内外で高い評価を受けてきた想田和弘監督。最新作『Peace』は、日常に起こる出来事を淡々と描きながら、次第に平和へと連想を広げる。
(以下、想田和弘監督)


最初は、作品を作るつもりじゃなくて、義父と、義父がかわいがる野良猫の共有される時間をただ撮っていただけでした。でも、ドロボー猫が登場して、猫同士の確執をたまたま目撃したんです。猫社会のドラマが進行していた。そういえば韓国から映画制作の依頼が来ていたなって思い出して義父の仕事を追いかけたんです。そしたらヘルメットのおじさんや車椅子の男性に出会って、橋本さんにも出会って、結果的に75分の映画になりました。

韓国から依頼されていた映画は「平和と共存」がテーマだったんです。平和と共存って言われたら、アフガニスタンにいかないといけないのか?それは手に負えないなあって(笑)。ほおっていたんです。でも、猫にも心の平和があるんだってことを発見したことで、気付かされたんです。戦場って日常の中にあるんじゃないのかって。

義父の仕事(福祉車両の運転手)も戦場。登場する橋本さんは、死を控えて身寄りもなくお金もない、これも戦場。こうした問題にどう向き合って解決してゆくのか。まずは日常の中にある戦場をどうにかしない限り平和が訪れることはないんじゃないのかって。日常の生活を見つめることで、何か平和になるためのヒントを得られないかって考えたんです。

最初はどう繋がるかわかんなかったけど、編集しているとそれぞれのシーンが、響きあって共鳴してきた。投げかけられていたテーマにはまったんです。ドキュメンタリーは一度きりのチャンス。もう1回ってことはない。猫や橋本さんとの出会いも、もう1ヶ月撮影が遅かったら、出会ってないんですよね。橋本さんの家はもう無いですからね。時は流れても繰り返すことは無い。ドキュメンタリーを作っていると、それを痛感します。



『Peace』は、東京・シアター・イメージフォーラム、大阪・第七芸術劇場で公開中。8月20日(土)から神戸アートビレッジセンターほか、全国順次公開される。
◇公式HPはこちら




7月5日 大阪市内
取材/文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員