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2011年08月18日 配信

83分間、全編セリフなしという前代未聞の映画を完成させたポーランドの巨匠・イエジー・スコリモスキ監督。「誰も私の日本行きを止める人なんていない。日本人がこの悲惨な状況を乗り越えようとしていることに尊敬する」と、有名人の来日キャンセルが相次ぐなか来日した。


熱狂的とも言えるファンを抱えるイエジー・スコリモスキ監督の最新作は、中東で米軍の捕虜となった男が、収容所に移送中の事故をきっかけに脱走。雪が積もりどこまでも続く森の中をひたすらに逃げる。ファンヴェネチア映画際では、審査員特別賞、主演男優賞を受賞した。

「高度に発達した現代でも、このような悲劇が生まれるということを描きたかった。台詞を省いたのは、映画をあいまいにしたかったから。アフガニスタン、イラン、パキスタン、物語がどこで始まるのか、どこで終わるのかそれを限定したくはなかった。主人公が口を開けばどこからきたのかわかってしまう。主人公のヴィンセント・ギャロは見かけが危険な男。誰もが彼のことを西洋人だと知っているけど、アラブ人に見える。アメリカで生まれ育った男が中東にやってきたという風にもみえる。
この映画は、ヘリコプターや軍といったスケールの大きいシーンから始まって、最後は男が一人になっていく。映画はとてもドラマチック、アクション映画といってもいいくらいだ。」

イエジー・スコリモスキ監督は、1935年ポーランドに生まれ、数多くの脚本・監督を手がけたが91年から監督業を一旦中断していた。大学講師や画家、俳優として活動を行っていたが、2008年に「アンナと過ごした4日間」で17年ぶりに監督復帰した。アンナに恋心を抱いた中年男の奇妙な行動を描いた、この映画は話題となり数々の映画賞を受賞した。『エッセンシャル・キリング』は2年ぶりの新作。

「私の住居の近くにアメリカCIAの基地があって、中東から捕虜が連れてこられているという噂がある。話しはこれがヒントになっている。前作『アンナと過ごした4日間』は近所の森で撮影したが、そのときとても快適だった。今回も、これを題材にすればまた自宅のベットで寝ながら撮影ができるのではないかという、私の怠け癖からこの映画は始まった。でも雪のシーンを撮影しなければならず、大量に雪が降るところは、近くてもノルエーで、そこはマイナス35℃の世界。これは私の怠け癖に対する罰だと思っている(笑)。」



映画『エッセンシャル・キリング』は、8月20日より大阪・第七芸術劇場、シネ・ヌーヴォ、京都・京都みなみ会館で公開のほか、神戸アートビレッジセンター、高槻セレクトシネマでも順次公開される。
◇映画公式HPはこちら


5月23日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員