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2011年10月06日 配信

主人公の砂田知昭は元熱血営業マン。67歳で約40年勤め上げた会社を退職。第二の人生をこれから謳歌しようという時にガン宣告を受ける。半年後に最期を迎えるその直前までカメラを回し続けたのは、娘の砂田麻美監督。抜群のキャラクターの父親と客観的に父と家族を見つめる監督のカメラによって、死を目前にしてもユーモアたっぷりな父親、愛情溢れる家族の姿が映し出される。


「普通のおじさんを、映画ではみんなのお父さんのように作りこまないといけない。そのためにはユーモアだったり客観性が必要だと思いました。それを作り出すひとつがナレーション。始めは男性に読んでもらおうと考えていたんですけど、当初予定していた人が難しくなったことがきっかけで、自分で吹き込むことにしました。セルフドキュメンタリーから、出来るだけ離したいという気持ちがあって嫌だったんだけど、同じ家族だし、最期まで作品を支えることをするべきと思いました。」

エンディングノートとは遺言とは異なり、人生の最期をどのように迎えたいかという自分の思いを家族や友人に伝えるためのもの。

「死ぬ前に準備をしておくことが大事だとは捉えて欲しくないんです。もちろん準備出来た方がいいかもしれないけど、準備できないからといって何も損なわれものはありません。(映画に関連して)『準備大事ですよね』って言われることが多くて。そういうことを言うために作ったわけではないので、ちょっともどかしく感じることもあります。」

砂田麻美監督は1978年生まれ。大学卒業後フリーの監督助手として主に是枝裕和監督の元で映画製作に従事。本作の制作にあたっては是枝監督にアドバイスを仰ぎ完成させた。本作が初監督作品となる。

「週末に美味しいものを食べに行こうとか、旅行に行こうとか、ちょっとしたモチベーションを設定すると思うんですけど、そういう感覚が一切無くなったんです。その時はじめて人間って希望を持って生きているんだな、小さな日常の中に希望を見つけているんだなって思ったんです。生まれて初めて人の死を見たというのもあるんだろうけど、父親を失った喪失感が大きく、これをどうにか元に戻したいと思ったのが制作のきっかけです。今はもうその時の気持ちは無くなっているけど、編集機の前にずっと居て自分が失ったものに対して嫌というほど向き合いました。人生観が変わりました。」


映画『エンディングノート』は梅田ガーデンシネマ、なんばパークスシネマ、MOVIX京都、元町映画館にて上映中。
◇公式HPはこちら



9月1日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員