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2011年09月27日 配信

市川海老蔵主演の3D時代劇『一命』(10月15日公開)。「十三人の刺客」や「忍たま乱太郎」「ヤッターマン」などヒット作、話題作を次々と連発する三池崇史監督に話を聞いた。


◆天下泰平の世。武士がその地位や面目を守るため形式ばかりを重んじるようになっていった。武士の面目とは何か、何を守るために生きるのか。現代社会への風刺が見え隠れする。1962年に制作され、カンヌ国際映画祭審査特別賞など獲得した「切腹」のリメイク作品。
「『切腹』を観ると50年前の日本映画って凄く面白いって感じる。日本の映画はその時代から継承されて今に至ってない。断層というか、どこかで断ち切られていると感じる。撮影所の迫力というか、その頃は日本人に力があって、役者も生きゝとしている。たぶん厄介で扱いにくくて、現場ではスムーズに物事が進まないと思う(笑)。今だとそんな役者は排除されていく。どこでも管理されて協調性があるのを求めるから。今が悪いとは思わないけど、何で映画を撮るのか、何で映画を観るのか、映画の役割は今とは全く違っていたのではないかと思う。心からその映画のことが凄いと思うことができた瞬間に元の映画は敵ではなくなって競うものではなくなる。これは『十三人の刺客』のときに始めて感じた感覚です。今回も感じた。」

◆主演、市川海老蔵
「いつかなくす自由をどう謳歌するか。根っこには歌舞伎があるから、いつかは帰らないといけない。ラブストーリーを撮ろうとは思わない。彼にはやるべき役がある。
撮影では挨拶でにらむ目が形になりすぎると『歌舞伎じゃないんでよろしくお願いします』『了解!』ってやり取りがあったことはあるけど、話し合いとか、形を付けるとかは好きじゃないから、何かを要求したことはない。出番が終わって先に帰ったと思ったら、スタッフが遅くまで残っているのをセットの陰から覗いていたことがあって、『好きだな』っていうんです。いつまでもやっているから不思議だったんじゃないかな。そうなってくると本人もどんな映画になるのか楽しみになっていったんじゃないかと思う。


◆時代劇初の全編3D映画
「ハラワタが飛び出したり、センセーショナルな作品になるはずだったんだけど、どんどんそぎ落とされていった。3Dで撮った一つの目的は、たまたま時代劇を見に来たおじいちゃん、おばあちゃんが3Dメガネを渡されて観たら『3Dってええもんやなあ』って感じてくれたらという狙い(笑)。よく『3Dじゃないといけなかったんですか?』って言われるけど、僕からすると『3Dでもいいじゃん』ってこと。もともと2D映画でもライティングを色々かえてどう奥行きを出すのかってことをやっている。技術的に3Dという選択肢が増えたから選んだだけ。」

◆三池監督は1960年大阪府出身。専門学校卒業後、TV制作、助監督を経てビデオ映画で監督デビューした。「忍たま乱太郎」のほか「ヤッターマン」「ゼブラーマン」「十三人の刺客」「クローズZEROシリーズ」などジャンルを問わず話題作、ヒット作を連発している。
「逆にみんな似たような映画をよく作れるなって思う。それは自分とはこういう映画監督であって、こういう風に人にみられて、自分の作りたい映画はこうであるって明確なビジョンがあって・・・と、かなり制御しないと出来ないんじゃないか。
これまで助監督としていろんな監督をみてきて、映画を撮ることがつらそうに見えていた。それは自分らしさを表現するための映画であったり、過去に名を成した作品に自分が囚われているから。そこから逃げるってわけじゃないけど、僕は普通にしているだけ。僕からすると『忍たま乱太郎』も『一命』も一緒。愛されて苦労して生まれた原作があって、原作者は魂をかけて作品を作った。それがアニメか時代小説なのかの違い。表現したいことは“生きることの喜びと哀しみ”それでしかないと思う。 こうしたいなって自分で思ったことはない。中学、高校で凄く諦めのいい子になった。バイクのレーサーになりたかったんだけど、実際、サーキットを1周したら『危ない、怖い』って思った。そんなんじゃレースは出来ない。才能が無いって悟って納得して辞めた。高校のときラグビーの強い学校に入ってみたら、全国から集まった清栄ばかり。痛みに対する恐怖があったらラグビーなんて出来ない。壊れない心と体をもった人たちが成功するスポーツ。こりゃだめだって辞めて、そこから願うことを止めたんです(笑)。」


映画『一命』は10月15日(土)より全国公開される。
◇映画詳細はこちら



8月29日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員