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2011年02月22日 配信

 永瀬正敏と小泉今日子の元夫婦が夫婦役を演じ話題の『毎日かあさん』。本作の原作者、西原理恵子さんがインタビューに応じた。


『毎日かあさん』は、西原さん自身の人生をもとにした物語。元夫で戦場カメラマンだった鴨志田穣さん(故人)はアルコール依存症と格闘、夫婦は一旦は離婚するものの再び生活を共にする。しかし、鴨志田さんはガンで余命を宣言され、残された時間は僅か、子ども二人と一家4人のつかの間の幸せな時間が流れる。
(以下、西原理恵子さん)


◆映画を観るとキツイものがありました。


私は男性誌、エロ出身、だから男性のファンが多かったけど、「毎日かあさん」は、自分をロンダリングして、善人をイメージさせて切り抜けてやろうって意味あいの作品。これまでの私のダークなイメージを払拭させるのが狙いの漫画だったんです。狙い通りで、お年寄りや、お子さんのファンが増えましたね。私原作の映画で初めてのヒット。でも本の売り上げは伸びてない(笑)。

棺桶を出して、お別れして3年経って、ようやくって時期にまた棺桶を開けるところから始めるわけですから、そりゃ映画を観るとキツいものがありました。娘は泣きっぱなし、息子は居眠りして…。

息子は、(映画の中の自分をみて)「こんな長いセリフ言えて、こいつ賢い」って言ってましたね。「あんなバカじゃない」とも。小泉さんは“だから離婚したんだよね”みたいな凄い顔。永瀬さんは、小泉さんの前で、怒られた犬のような顔をして(笑)。私しか知らないはずの鴨ちゃんのこころもとない笑顔とかよく知っているなって思いました。鴨ちゃんも、酔って家に帰ってくると、「良く覚えてないけどすいません」って感じで小さくなっていた。雰囲気が似てました。

(監督の)小林さんが家に来たときは、気の優しそうなボンって印象で、絶対映画をものにせんやろなって思ってました。でも、ようここまで持ってこられたなって思います、びっくりですよ。漫画に忠実で、小泉さんがぜんぜん輝いていない。スタイルまで悪く見える。私の知っているキョンキョンじゃない(笑)。もっさりしたオカンになっていて驚きました(笑)。



◆商売人としてちょっと焦っているんです。


商売人としてちょっと焦っているんです(笑)。私の原作は殆ど映画化されてしまって、次の商品がなくて…。次の商品がないのは一番きついことですよね。なんとかしないとって思っているんだけど。

景気が良いと大作の映画が多くなるんだろうけど、不景気だど低予算で、人生曇り時々晴れみたいな私の作品が好まれるんでしょうね。これまで私の原作を映画化したのは、みんな関西出身の監督。東京の人は格調高くて、芸術性とか人間の悲しみとか、人間の裏側とかを描きたがる。私はそんなんもうええやんって思う(笑)。アルコール依存症の治療でもそうなんだけど、なぜそうなったのか原因を追求してはいけないんですよ。これからどうするかしか考えてはいけないんです。原因なんかええやん、なんとかやっていこっていう、西のスタンスが不況にマッチしたのかもしれませんね。

女の人は、立っているだけで美しいって言われる時期から、立っているだけでうっとうしいって言われる時期まで、段階を経験するんです(笑)。自然とステージを変えてやっていかなきゃいけない。それが作品を作る上で良い引き出しになるんですよ。もうちょっとすると、嫁いびり、その次ぎは孫いびりかな。お客様がいる限り、身内の悪口を言い続けたいと思います。



◆幸せの敷居を下げたら、笑ってられる。



東京での子育でと、沖縄での子育て、どちらが育てやすいかっていったら、そりゃ沖縄でしょ。自然や、おじいちゃんおばあちゃんがいて、外に放り出しておいたらいいんですから。離乳食なんて餃子の中身でいい(笑)。何でにんじん調理するのに1時間もかけているのかわからない(笑)。神経質になっているお母さんが多い、それが貧乏になるとさらにイライラしてくる。私の親は仲が悪くて、毎日喧嘩していた。だから私の優先順位は“親が怒っていない家”だったんです。それには怒らなくていい状況を作ればいいだけのこと。子どもに「勉強しないでいい」って決めたら楽ですよ。それで怒ること半分ぐらい減りますからね(笑)。

息子はのんびりしてますね。俺が俺がって前にでることなんてない。最近ちょっとお父さんに似てきたかな。娘は私に似てきて性格が悪くなってきたかな。ほら、女性が好きな人の前で示す態度と、嫌いな人の前で示す態度とまったく違うじゃないですか。娘も上手いもんですよ。近所の嫌いな男の子には虫みたいな扱い(笑)。お母さんとしては、大変よいことだと思ってます(笑)。

ちょっと笑ってもらって、ちょっとほっとしてもらって、それで幸せの敷居を下げてもらったらって思って連載をやってます。この映画を観た後だったら、「掃除しよう」とか「子どもの勉強をしからなきゃ」とか思わないでしょ(笑)。だらだらしてテレビ観て寝ようかって…。日本人は真面目すぎるんですよね。関西圏の何でも粉にして混ぜてしまえ!っていう文化を取り入れると楽ですよ(笑)。

私は、コロッケ屋のおばちゃんと一緒。商売が嬉しい。働いていること、お客さんが来てくれることが嬉しい。FXで負けたとしても、出版社が潰れて印税2000万円を取り逃がしたとしても、それは舞台の上でバナナの皮で転んでいるいちばんオイシイところ(笑)。それぐらいのことも笑ってられるようにいたいですね。よく人から、「子どもに怒りませんね」って言われるけど、アル中が家で暴れていたんですから(笑)、子どものちょっとしたことなんて、怒る気にもなれません(笑)。



西原理恵子原作、『毎日かあさん』は公開中。
◇映画詳細はこちら


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2月18日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員