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2011年02月15日 配信

 独自の世界観で話題を集める『冷たい熱帯魚』(公開中)。監督は「愛のむきだし」「紀子の食卓」などの園子温。本作に込められた日本映画業界へのアンチテーゼとは─。


『冷たい熱帯魚』は、家族不和を抱えながらも、小さな熱帯魚屋を営んでいた社本(吹越後満)が、娘の万引きをきっかけに、同業者の村田(でんでん)と出会うことから、破滅へと引き込まれてゆく。90年代前半に実際に起こった連続殺人事件を園子温がアレンジして映画化した。観たものを飲み込む強烈なインパクトは計り知れない。
(以下、園子温監督)


◆不思議な力がみなぎる映画


 裁判での証言を元にしたセリフ、裁判記録から実際に起きたことを映画にしています。映画は地獄だけど観客の目を通すと、まだまだ生きてやるって不思議な力がみなぎるみたい。ちまたに溢れている癒し映画より、癒されるって話で、東京ではひと足先に公開されているんだけど、連日立ち見が続いてる。単に気持ち悪いだけだと、気持ち悪いのが好きな人だけが喜ぶものになっちゃうから、そこは抑えました。そうすると、意図していないんだけどコメディになっちゃった(笑)。結果的には吉本の映画より笑える。劇場では笑いが絶えないみたい。でも、大笑いしてスカッとして劇場を出てもらう、良かったなって思います。

 (主人公の)社本(しゃもと)って云う名前は、友達にいるんですよ、社本君が。実際に瀬戸際、崖っぷち人生を歩んでいて、イメージがぴったりだったから(笑)。映画を観て何かを持ち帰ってくれたら…彼を応援する意味で社本って付けました。でんでんさんに、「田中!」て言われるより、「社本!」って言われたほうが絶対いいよね。


◆役者の方向性を見つけてやる


 新人を鍛えるコツ?─。それは、いじめるだけですよ。映画ってものに開眼してもらうことが必要だと思っているんです。監督同士で喋っていて、「あの役者、芝居下手だな」そう言っているのを聞くと、演技を直さなかったのかなって思う。監督の仕事は演出だけだろって。評論で、監督はどうでもよくて“満島ひかりの演技が凄い!”なんて書いてあるのを見ると、「演出の担当は俺なんだから、凄いのは俺なんだ!」って言いたい(笑)。監督のほどんとは見ているだけ。でもそれは役者にとって凄い残酷なことだと思う。とくに新人はこれからなんだから、芸能界で生き残らせるために、役者の方向性を見つけてやるために、熱くスパルタするんです。

 日本映画は実録物をやらない。海外にはいっぱいある。デリケートな問題に踏み込むことを怖がるから出来ないのかなって思う。でも実録って言っても、事件そのものを忠実に描くのではなくて、事件を使って何かを描く、今回の映画では、不安定な家族、気の弱い主人公の目線で人生を描くっていうのがモチベーションです。それと、この映画を作る時、同棲していたフィアンセの家財道具が一切無くなって消えてしまったんです(笑)。路上を歩いていても、何かしそうで…犯罪を起こしてからじゃ遅い…そういう頃に作った映画。いいタイミングだった(笑)。


◆心臓がドキドキしてしょうがない映画を撮り続けたい。


 日本映画のダメなところは、有名人を並べておけばなんとかなるっていうめちゃくちゃな構造。中身勝負でやった方がいいに決まってる。ノンスターで映画を作ってヒットさせたかった。今回は、文字通りヒット、有名人がでてこなくてもヒットするってことを証明することができた。

 次回作、『恋の罪』(主演:水野美紀)は渋谷のラブホテル街で起きた事件をモチーフにした実録映画。別々の行き方をしてきた3人の女性を通して、30代、40代の女性が抱えている問題を映画化しました。3分に一度は、ぼよよーんですよ(笑)。女性は元気が出る。男はおっぱいが出てうれしい。次回作のテーマはズバリSEX。

 映画はテレビでは放映できないものをやるべき、映画館の暗闇のなかで見せる、見世物、お化け屋敷みたいなもの。今は癒しの映画多すぎる。心臓がドキドキしてしょうがない映画を撮り続けたい。



映画『冷たい熱帯魚』は、【東京】シネ・リーブル池袋、テアトル新宿、【関西】シネ・リーブル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸にて、絶賛上映中
◇公式HPはこちら



2月3日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員