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2011年02月01日 配信

『毎日かあさん』(2月5日公開)は、西原理恵子の同名漫画が原作。小泉今日子と永瀬正敏の元夫婦が夫婦役として共演したことで注目を集めている。上岡龍太郎さんの息子で、この映画を監督した小林聖太郎さんがインタビューに応じた。


 二人のキャスティングは小林監督から提案。かつて助監督時代にそれぞれと仕事をした経験があり、今回の共演が実現したという。

「小泉今日子さんは、どうしたら作品がよくなるか、その視点が確か。子どもたちをどうするか、いろいろ話をしました。永瀬さんは役作りのため、絶食したり筋トレをして、1日1キロペースで痩せて、本人も『当然です』っていう感じでやってくれました。二人の共演は、芸能ネタにされてしまうというリスクがあったんですけど、永瀬さんからは、『観てもらえる機会が増えれば良いんじゃないですか』って言ってもらえました。それでも、はじめて二人が揃ったシーンの撮影では、小さな部屋で1つの画面に収まっている二人をみると、クラクラしましたけど(笑)。」

 物語は、漫画家の西原理恵子さんと、その夫で戦場カメラマンだった鴨志田穣(故人)との夫婦関係、そして離婚、夫の闘病生活や、二人の子どもの子育てなど自らの“おかあさん”体験がユーモアや皮肉たっぷりに描かれている。しかし、飽食の中で暮らす日本人や、戦争に巻き込まれ生死の一線で生きている子どもたちと、公園で遊ぶ子どもの対比など、鴨志田さんが抱いていたであろうメッセージも強く込められているのが印象的だ。

「自分だけが幸せでいいのか。その思いが自分に跳ね返ってきて、辛くなっている人。正しすぎる辛さに悩んでいる。そんな鴨志田さんにはシンパシーを感じます。だからみんな映画化したくなるんでしょうね。で、それでヤケドする。怖いですねぇ〜(笑)。そこを外すのは考えなかったです。『毎日かあさん』は、もともと新聞に連載された漫画。西原さんのなかでもマイルドな方で、漫画のエピソードだけだと物足りない。感情移入するためには、もっと実人生に踏み込まないといけないと思っていました。でも単なるダイジェストにするのも面白くない。どこに足場をとるのか脚本作りが難しかったです。5歳ぐらいの子どもが観ると怖いかもね。アニメを観に来たつもりだったのにって(笑)。でも新聞読者が対象なので、下ネタはありません。ファミリー映画です。全体が楽しければ、一瞬怖い所があってもいいんじゃないかって思います。僕も小学5年生の時、お母さんと『セーラー服と機関銃』を観に行ってすごい気まずかった(笑)。渡瀬恒彦がSEXしているシーンと、薬師丸ひろ子が、機関銃を発射して『カ・イ・カ・ン』っていうところしか覚えてない(笑)。でも、そんなもんじゃないかなって(笑)。話をぬるくしてしまったら、西原さんの作品をやる意味がないんじゃないかって思います。」



 小林監督は、1971年大阪生まれ。大学卒業後、ジャーナリストの助手として活動、やがて映画の演出助手を務めるようになり、「かぞくのひけつ」(2006)で監督デビューした。本作が2作目となる。

「もともと、プロデューサーが『かぞくのひけつ』を観て、この描き方だったらということでオファーが来たんです。家族しか描かない……ってことはないんですけど、嫌いなテーマではないし、原作を読んで面白かったし、でも難しいやろうなとは思いながらも、やってみようって思いました。作る映画は人情劇、コメディ、喜劇でいたいですね。悲劇を『悲しいでしょう』ってみせるのは大嫌いです。オモロイのも『ほら、オモロイでしょう』ってやっている芝居も鼻に付く。人が必死に苦しんでいる様をみるから面白い、それは笑いであっても泣きであっても一緒。その人が生き生きともがいているのが面白さだと思う。」

 原作は西原理恵子さん、実体験に基にした作品が多く「いけちゃんとぼく」「女の子のものがたり」など映画化された作品も多い。また映画化では自ら出演することがある種、定番となっていることでも知られる。

「監督やるってことになって、仕事場の見学も兼ねて西原さんの家に挨拶にいったんです。そこで、『(原作を)どんな風にいじってもらっても、口出しはしません。ただ私をどっかに出してください』ってお願いされて(笑)。『私は山村美沙作品における山村紅葉を目指します。ちょっと嫌味をいうおばちゃん役が得意です!』っていう売り込みが入って、どうしよって悩みました(笑)。映画冒頭でのナレーションや、漫画を描く手などで出演してもらってます。でもさらに続きがあって、手から画が引いて、西原さんが映し出されて前に出ようとすると、助監督が飛び出てきて画面の外に連れて行かれるっていうオープニングを書いていたんですけど、それは大人たちに止められました。3稿位までは残ってたんですけど(笑)。」

小泉今日子、永瀬正敏が共演した『毎日かあさん』は、2月5日(土)より全国公開される。
◇映画詳細はこちら

関連情報―幸せの敷居を下げたら、笑ってられる『毎日かあさん』著者、西原理恵子インタビュー



1月27日 大阪市内
取材/写真・文 羽渕比呂司

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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員