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2010年05月20日 配信

 10年前の2000年4月、介護保険制度が施行された。これを期に介護サービスの数は急激に増加し、施設も続々と建てられた。しかしその裏で、介護を必要としながらも制度の枠組みから漏れてしまう人々も多く存在することとなった。

 映画『ただいま それぞれの居場所』は、画一的な介護サービスにジレンマを感じ、自ら理想とする介護を実現させようと、介護施設を立ち上げた人々を追ったドキュメンタリーだ。>>映画詳細はコチラ


 監督は、「ゆきゆきて、神軍」(1987)で助監督として映像の世界へ入り、以降、映画やCM、TVなどで活躍する大宮浩一監督。介護保険制度開始前後に今回の取材先でもある介護施設「元気な亀さん」を舞台にした長編ドキュメンタリーを製作・公開している。映画製作は10年ぶりとなる。そんな大宮監督にインタビューを行った。


【】企画・製作・監督を行った大宮浩一さん 1958年生まれ

―今回は「元気な亀さん」を含め、全部で4つの施設が登場します。「元気な亀さん」以外の施設は今回の映画のために探してきた施設です。事前に25カ所ぐらいの施設に当たってその中から選びました。

 登場する4つの施設に共通していたのが、僕たち取材陣をお客さんにしてくれないことでした。利用している方も気軽に話しかけてくれてました。違和感なくその場に居られたのが第一印象でしたね。

 撮影は半年間です。最初から期限を区切って撮影に入りました。ドキュメンタリーって、長い時間撮ればなんとかなるだろうって考えになりがち(笑)。でも、撮れたものが僕らの力量なんだって決めて挑みました。そうしないと、興味が次から次へと移ってしまって、終わりがなくなるんですよ(笑)。

―最近のテレビで、みんなナレーションやテロップに慣れてしまっているので、不親切な映画に仕上がっているかもしれませんね(笑)。

「認知症の○○さん」っていう情報はあえて外しています。はじめに“認知症の“っていう情報を与えてしまうと、例えば、お茶を飲むといった行為、暴れたり、何をやっても“認知症”の人がやっているってことになってしまう。○○さんっていう人をみてもらいたいという考えからです。さらに、後半からは施設名の表示もしていません。(観客に)あえて混乱してほしかった。この施設はどうだからとか比較して観て欲しくなかったからです。

―50歳になるのかって思った時に、老後の楽しみの一つにもう一本ぐらい映画を撮っとこうかっていうのと、介護保険が始まって10年という節目がクロスしたのが、今回の映画製作のきっかけです。

「ゆきゆきて、神軍」の助監督をしていた頃は、政治的な意味合いを伝える手段としての映画でした。でも、年のせいか声高にメッセージを言うことが、少し恥ずかしくなってきました。本当に伝えたい事って、大きな声でなくてもいいんじゃないかってね。最初、メッセージを伝えようと思って始めた映画だったけど、気づいたらメッセージなんていいやってなっていた(笑)。せっかく、お金を払って観に来てもらうんだから、楽しんでもらいたい。お金払っても両腕を組んでうつむいて観られたんじゃ、申し訳ないですよね(笑)。

 単にメッセージを伝えるだけなら映画よりも、テレビや活字、今ならネットの方が力があるのかもしれない。映画は時代のある面を切っただけ、それ以上、それ以下でもない。でも映画ってスローなんですが、じわりじわりと効いてくる媒体だなって思っています。


・この映画で登場する介護施設が、素晴らしいと言うつもりはありません。
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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員