このエントリーをはてなブックマークに追加
2010年05月26日 配信

 人間の肉体を金属細胞が覆いやがて怒りに支配される。暴力とエロティシズムを描き、衝撃を与えた『鉄男』。あれから20年、シリーズ第3弾『鉄男 THE BULLET MAN』が誕生した。監督の塚本晋也さん、主演のエリック・ボシックさんに話を聞いた。

「鉄男」(1989)で塚本晋也さんは、製作・監督・脚本・美術・撮影、出演など一人9役をこなした。この作品で、熱狂的なファンを獲得し、塚本の名が世間に知れ渡った。その後、「鉄男?」(1992)が作られている。

塚本:
自分のなかに持っていた混沌としたもの、もやもやしたものを表現したいと思ったのが「鉄男」の始まり。鉄と人間を組み合わせたエロティシズムの映画は面白いんじゃないかと、わりと抽象的なものから始まったんです。

「鉄男」では、いろんな評論家の方が解釈を加えてくれて、逆に言葉で自分のやりたかったことを教えてくれました。「鉄男?」の時には、自覚的にサイバーパンク、都市と人間というテーマをもって描きました。

それで完結したつもりだったんですが、アメリカ版「鉄男」を作らないかって声が掛かったのが3作目の製作のきっかけです。自分がやりたい「鉄男」が出来るのか、はっきりしたストーリーができていなかったので、それを探す作業に時間がかかりました。5年位前までは、アメリカの会社で作る予定だったんですが、やはり伝統のように自分たちで作ることになりました。最終的には思ったとおりの「鉄男」ができました。


【】

 本作は全編英語、主人公はアメリカ人。「アメリカ版鉄男」が製作のきっかけだったことから、塚本監督にとってこれは必須事項だったという。主演のアンソニーを演じたエリック・ボシックさんは熱烈な塚本ファンだった。

エリック・ボシック:
ハイスクールの時、友だち同士でへんなものを探していて(笑)。VHSで何となく「鉄男」観たのがきっかけで、そこから塚本監督の大ファンになりました。この映画のオーディションでは、塚本監督の映画とは聞いていたけど、最初は何の映画なのか教えてもらえなくて、外人だし、よく出てくるFBIかCIAの簡単な役なんだろうって思ってました(笑)。2回目の選考の時に「鉄男」だって教えてもらい、凄いエキサイト!絶対やりたいって思いました。

 近未来の東京が舞台となっている。鉄男シリーズでおなじみ、塚本監督が自ら演じるストーカーももちろん健在だ。

塚本:
平和ボケした東京をぶち壊す、バーチャルリアリティだと思わせといて、それが現実なんだと覚醒させるのがテーマ。ストーカーだけは、これだけは自分で演じる。どうしてって言われても困る(笑)。奴はある年齢の間にやりたかった役。でも、もう限界なんで終わりです。これで、もうちょと違う種類の映画も作っていけるんじゃないかなって思ってます。

映画が出来てイタリア、スペイン、韓国で上映したんですけど、最初の反応がスタンディングオベーション。どうも期待していた反応と違うと感じたんです。だから3、4ヶ月かけ徹底的にやり直して、それをニューヨークで上映したんです。始まってすぐ21人が場外に出ていって、残った人は熱狂的に観てくれました。刺激がないと「鉄男」らしくない。

鉄男の次回作ですか?やってもいいっていう気持ちはるけど、一度やると言ってしまうと、 今度はいつですか?って必ず聞かれるので、やるとは言わないようにしています。また18年苦しむのは嫌ですから(笑)。


『鉄男 THE BULLET MAN』は、東京・シネマライズ、大阪・梅田ブルク7ほか全国公開中。

[大阪市内]
取材/写真・文 羽渕比呂司

The following two tabs change content below.
羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員