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地球に必要なエネルギー源を採掘するため月にたった一人派遣させられた男、サム。会社との契約期間は3年。地球との直接通信は不可。話相手は1台の人口知能ロボットだけ。そして任務終了まで2週間をきり愛する妻子が待つ地球へ帰る日が迫った時、突然幻覚が見え始めサムの周りで奇妙な出来事が起こり始める――。

月に3年間派遣された男の悲しくも恐ろしい運命を描く『月にとら囚われた男』が公開される。監督は、デヴィッド・ボウイの息子、ダンカン・ジョーンズ。

シンプルなストーリーの中に織り込まれた、“人間の孤独”や“企業に利用されている個人”というテーマは意識していましたか?

 正直、「企業」とかのアイディアは僕にとっては映画の背景でしかないんだ。本当に描きたかったのは主人公の「サム・ベル」、そして彼が経験すること。一個人が、彼のような究極の孤立状態に置かれた時、「孤独」が人にどういう影響を及ぼすのかっていうほうが僕は興味深いと思うんだ。例えばそれが月の裏側にいることだったり、毎日部屋に籠もってパソコンをいじっていることだったりね。「孤独」は人を変える。それがこの映画で僕が本当に伝えたかったことだよ。

なぜ月への派遣期間が「3年」なのですか?なにか特別な理由など?

 まだ映画を見ていない人たちのためにあんまり詳しくは言わないけど、「3年間」っていう契約期間は、人が集中力を持続して会社の思うようにキチンと働いてくれるのに丁度いい長さだって会社が思っているっていうことが理由かな。3年経った時に、孤立し、フラストレーションが溜まっている人がまだ効率的に仕事が出来るなんて到底期待できない。だけど3年間で地球に帰ることが出来ると約束していれば、彼らはもっと仕事に励み、最大限に力を発揮するだろうという会社の考えなんだ。そして3年ごとに、またやる気のある新しい人を使えばいいんだからね。

この作品には過去のSF作品へのオマージュが随所に見られますが、特にどんな映画に影響を受けられましたか?

特に70年代後半から80年代ぐらいにかけての映画かな。例えばショーン・コネリーの『アウトランド』、ブルース・ダーンの『サイレント・ランニング』それにリドリー・スコットの『エイリアン』だね。特に『エイリアン』には月で働く人々が描かれていて、僕らの作りたい作品内容そのものだったから興奮したよ。

本作の邦題、『月に囚われた男』は父親であるデヴィッド・ボウイさんの出演作、「地球に落ちて来た男」を連想させますが、その撮影時に父親に連れられてニューメキシコに行かれた時のことを覚えていらっしゃいますか?また、父親であるデヴィッド・ボウイさんのことを、トップミュージシャンとして、俳優としてどう思われますか?

 昔のことすぎて、残念だけどその当時ニューメキシコに行ったかどうかは覚えてないな(笑)でも確かに僕は、彼の人生の中で最もクリエイティブな時期にすぐ傍にいた。僕自身、“音楽”というものに興味を持ったことがなくて、それが僕を彼とは違う道に進ませたんだけど、彼のことはとても尊敬しているよ。彼がどんなに仕事に対して真剣かってことも知っているしね。間違いなくそんな彼の姿勢が僕に大きな影響を及ぼしたんじゃないかな。
 それに、彼が役者として映画の撮影をしている時、僕はいつもセットに連れて行ってもらった。それには確実に影響を受けたね。いろんな映画のセットに行くことが出来て、すごく興奮したよ。大きな1950年代の街のセットを組んだりしている撮影現場なんかは特にね。僕が映画の世界で働きたいと思ったきっかけはそういう、ダイナミックで素晴らしいセットに魅せられたからかもしれないね。


父親が日本の映画である「戦場のメリークリスマス」に出演されていますが、ご自身は日本の映画やアニメ、ゲームなどの日本の文化はお好きですか?

 もちろん!父が70年代に頻繁に日本に来ていた時、しょっちゅう一緒に来ていた僕は、日本の文化を経験して強い影響を受けたよ。それに映画を学び始めてからは黒澤明監督の大ファンになったし、北野武監督作品も大好き。攻殻機動隊、AKIRA、エヴァンゲリオンなんかのSFアニメも見るしね。こういう、映画だけじゃない日本の文化からも僕は影響を受けていると思うよ。

 『月にとら囚われた男』は、4月10日(土)より恵比寿ガーデンシネマ 4月24日(土)より梅田ガーデンシネマほか全国順次公開される。




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羽渕 比呂司
羽渕 比呂司
 大阪ガス行動観察研究所社員