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 蝉の鳴き声が360度から聞こえてくる8月中旬、大井町線九品仏駅は路面電車の駅並みに小さな駅でありながら、たくさんの人が改札から列をなして出てくる。それというのも、今日平成26年8月16日は3年に1度しか行われない「お面かぶり」なるものが浄真寺で行われるからだ。 しかもこれ、関東ではこの浄真寺だけでしか行われていない(関西、奈良の当麻寺では「練供養(ねりくよう)」として1000年以上続いている)。 つまり、なかなか貴重な仏教行事なのである。

 駅を出るとすぐに見えてくる参道の入り口には、浄真寺参道と書かれた大きな石が立っている。 その奥に連なっている緑の道は、まるで海が近い東海道のどこかを歩いているかのような感覚にさせる。松などの大木が並び、ここが東京世田谷であることを忘れてしまいそうになる風情だ。 個人的には、三ヶ月の子供を抱え、どこにも出かける予定のないこの夏。なのに、突然どこかの観光地へ来てしまったようで心がはずむ。汗は止まらないが、見上げる緑とそこからこぼれる日差しがとても美しい。

 ちなみに九品仏とは駅の名前にもなっているが、浄真寺の通称で三つのお堂にそれぞれ三体の阿弥陀如来像が安置されていることに由来する。

 その浄真寺総門をくぐると、今度は「ここは京都?」と思うような趣のある境内。緑色の楓の手のひらが無数に手招きしている。 その下を歩いていくとすぐに閻魔堂があり、その前にも人人人。お賽銭をしようとお堂の入口に立つと、2メートルはあろうかと言う大きな閻魔様の像が、まっ赤な顔で見下ろしていた。 子供の頃は地獄に落とされたり舌を抜かれたりするんではないかと恐れていた閻魔様だが、今はお寺の門をくぐってすぐの場所に待ち構えていらっしゃることで、アトラクションの派手な序章のよう。 いきなりスターのお出ましと言う構成に、思わずウキウキしてしまう。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/