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2014年10月09日配信
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人気ホラーテレビゲームの映画化『劇場版 零~ゼロ~』が全国公開中だ。

「女の子だけがかかる呪い」「神隠し」――。山間の町にある女学園で巻き起こる不可解な出来事の数々。ひとりの生徒をめぐる想いが怪奇を生みだしていく。


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メガホンをとったのは『リアル鬼ごっこ』『バイロケーション』などさまざまなホラー映画を手がけてきた安里麻里監督。今回の『零』では、幽霊的な恐怖ではなく、女の子たちの感情の機微に潜む恐ろしさに意識を強く持ち、演出を施した。「Jホラー的なノリではなく、耽美なホラーを目指しました。そういう世界観を出すために、映像的な部分でも、ハイビジョンではなく16ミリのフィルムで撮影して、幻想感をあらわしました。手法としては『ブラック・スワン』のような形。驚かしてドキドキさせる……という見た目の怖さではなく、人間ドラマを主軸にして、人間の本質を映しだしたかった」

物語の中心を担うのは、多くの同級生たちから憧れの目を向けられているアヤ。彼女が、ある時期から部屋に引きこもりはじめてから、学園内に不穏な空気が広がっていく。演じたのは、今回が映画初主演となる中条あやみだ。「女の子の“怖さ”が描かれた作品だと思います。女の子って、好きなものに対する独占欲が強く、関係性の壁が薄い。距離感が近いですよね。そこでの感情をどう見せるか、それを大事にしました。私は今作で(女の子との)キスシーンがあるのですが、美しく撮られているけど、一方で『これは見ても良いものかどうか』という不気味さも感じられます」

さらに本作から想起させられるのは、80年代角川映画の味わいだ。映像の質感、カメラワーク、話の設定、そして美少女の存在。安里監督にははっきり「角川映画」へのイメージがあったようだ。「今回、角川映画の製作・配給で映画を撮るということになって、やはり古き良き角川映画への意識は強くありました。十代の女の子ならではの、まだいろんなことが固まっていない、そして表情も子どもから大人へと移りゆく過程の美しさ、そして何より危うさを雰囲気として表現したくて、その“映画的表情”を中条さんが持ち合わせていた。中条さんを見たとき、『やっぱり映画に必要な顔ってあるな』と思ったんです」

中条も、美しくもあやしいムードを持つアヤを、言葉ではなく雰囲気で表現しようと心がけていた。「アヤは、思わずみんなが振り返ってしまうような独特の雰囲気を持つ女の子。手の届かないような存在感を、台詞ではない形で伝えたかった」

「ホラー映画×美女」は映画として欠かせない組み合わせ。ホラー映画への出演は今や若手女優にとって第一歩になりつつある。

「ホラー映画は、主人公が何ものかに翻弄されるのがおもしろいところ。観客はそのどきどきするような展開の中に感情移入させなければならない。観ている人に、そのか弱さを『守ってあげたい』と思わせる必要がある。だから、ホラー映画には美少女がつきものなのだと思います」(安里監督)

「あと“裏切り”もあると思うんです。美しいもの、きれいなものには誰もが憧れる。だけど、ホラー映画の美少女は時として観ている人を裏切ることもある。そこに興味を持つ人も多いのではないでしょうか」(中条)



『劇場版 零~ゼロ~』は全国公開中
◇公式HPはこちら


取材/文 田辺ユウキ(映画評論家)


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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。