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池辺葵の原作コミックを中谷美紀主演で映画化した『繕い裁つ人』が全国公開中、本作のメガホンをとった三島有紀子監督にインタビューを行った。

本作は、神戸で洋裁店を営む二代目店主の職人気質な仕事に対する考え方、そして服を通じての人との関わり合いについて触れる物語だ。三島監督は、『しあわせのパン』『ぶどうのなみだ』など、これまでも人間にとって欠かせない「衣食住」をテーマに映画を撮り続けている。

「私自身はそのテーマは意識をしたことがありません。ただ、人間が何を大事にして生きていくかをずっと描きたくて、それが衣食住につながっているのだと思います。今回は服を作る女性のお話ですが、中谷美紀さん演じる市江は、覚悟をもって、祖母からお店を受け継いでいる。そこにひかれました。なぜなら彼女の祖母は、服作りに関して神に近い人だったから。それを受け継ぐのは、相当な気持ちがないとできない。一方で、長く仕事を続けると考え方がこりかたまっていく。この映画は、そこから(市江が)自由になって欲しいと思って作っていきました」

三島監督は大阪出身で、神戸の大学に通っていた。今作では、念願の思い出の地での映画作りとなる。

「仕立て屋さんの映画は、ぜひ神戸で撮りたいと思っていました。地方で撮影するには予算も厳しかったのですが、内容的には神戸がふさわしかったので、何とかお願いしました。神戸は建築面でも異国文化があり、しかし当たり前のように街になじんでいる。服飾もシャレ感が一般的な形でなじんでいる。神戸の震災のとき、異国情緒ある建物が壊れてしまった。だけど、時間をかけて立ち直っていった。そういう街のあり方を今、しっかりと記録したかったんです」

中谷美紀演じる市江は、洋服作りの腕が買われて、大手デパートから「ブランドを出さないか」と熱烈なオファーを受ける。しかし、確固たる信念をもって仕事をしている彼女は、断り続ける。その中で、さまざまな迷いが生まれていく。本作の見どころは、彼女の心の変化だ。

「市江のキャラクターに寄り添いたいという衝動がありました。天才的な祖母から受け継ぎ、『やらなきゃいけない』という思い、その葛藤の中で、小さくもがいていく。演じた中谷美紀は、私の印象として完ぺきな女性なのですが、彼女が市江という役を通してほころびを見せていく。そういう姿に注目して欲しいです」

『繕い裁つ人』は全国公開中
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取材/文 田辺ユウキ(映画評論家)

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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。