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風間志織監督の、『せかいのおわり』以来11年ぶりとなる劇場公開作『チョコリエッタ』(公開中)。主演は、ドラマ『ごめんね青春』の森川葵、『そこのみにて光輝く』の菅田将暉という、今もっとも注目を集めるふたり。フェデリコ・フェリーニ監督の名作『道』に影響をうけた若い男女が、映画を作るために旅に出る。人間にもなりたくない、大人にもなりたくない。モラトリアムの中でも揺れ動く気持ちを、繊細な描写で描いている。

風間監督にとってフェリーニは「10代の頃に観てパンチをくらった、特別な監督」というほど大きな存在。「『サテリコン』(1969)を観たときに映画の洗礼をあびました。自分にとっては、鈴木清順監督『殺しの烙印』(1967)、スタンリー・キューブリック監督『時計じかけのオレンジ』(1971)と並んで、映画に憧れるきっかけとなりました」

森川葵、菅田将暉も劇中で同じように、『道』にハマって、映画への憧れをいだいていく(もっとも、キラキラした思いではなく、社会に対して絶望している中から見いだした、ひとつの希望のようなものだが)。だが、バイクに乗って、カメラをもって旅をするが、道が壊れていたり、進入禁止区域に指定されていたり。「3.11」を経験した日本の現実が、ふたりの道をさえぎる。これまでも風間監督は、『せかいのおわり』では「9.11」以降の世界のムードを物語に取り入れるなど、社会で起きていることに突き動かされて、映画表現に挑んでいる感じがする。

「『チョコリエッタ』は(そういう考えが)強くありました。今の日本のムードが、気持ちが悪い。みんな、知らん顔をしているのが気持ちが悪い。もともと多くが知らん顔をして生活していたところを、ついには政府がもっと隠すようになった。3.11以前からそういう雰囲気はあったけど、今はっきりとあらわれている。『美しい日本』なんていうキャッチフレーズもあったけど、どうかしていると思った。もっと立ち止まって考え直さなければならないことが多いのに、その後のスピードの早さにびっくりしている。しかも、若者はこのスピードの早さに慣れている。でも、私たちのすぐそばの道は、断絶されている。みんな見ないようにしているだけ。それをこの映画ではっきり見せたかった。このままでは、子どもの将来が途絶える」

エンディング曲として流れるのは、忌野清志郎さんのヒットソング『JUMP』の森川葵のカバー。日本の社会について、過激さ、ブラックジョーク、刺激、そして深いエールをこめて曲を作ってきた清志郎さん。森川葵の歌唱は、原曲とは違う、まさに現在の世の中の不安定さがにじみでている。

「もともと私自身が清志郎さんの曲が好きで。(森川葵のカバーについて)狙っていたわけではなく、彼女が撮影現場でよく口ずさんでいたんです。その声の雰囲気がとても良くて。それを最後に思い出して、『JUMP』を歌ってもらいました。この映画のカラーをあらわす歌になったと思います」

『チョコリエッタ』は全国公開中
◇公式HPはこちら


取材/文 田辺ユウキ(映画評論家)

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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。