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 地下鉄の駅から出てくるとそこは地元の人たちが赤鳥居と呼ぶ、深川不動堂の赤門の下。かつて生活圏だったこの場所に立つのは、一体どれくらいぶりだろう?  約束の時間まで少しだけ余裕があったため、駅の出口からそのまま参道を突き進みお不動さんへとご挨拶。今では可愛い息子も生まれましたと、慌ただしく近年のできごとをご報告した。

 お不動さんへ続く参道は、誰が名付けたのか「人情深川ご利益通り」という、まるでドラマや演歌のタイトルみたいな名前だ。通りは短いながらも味わいのあるお店が多い。お団子がおいしい明治時代創業の伊勢屋さん、あげまんの宮月堂や、定食が美味しい京漬物の近為さん。 ちょっと見ないうちに素敵なカフェもできていたし、何度かケーキを買って食べたことのあるサロン・ド・ペリニヨンはパティスリー・カフェ・ウフレという名前に変わって今も営業されていた。 近くの好きだったフレンチはなくなっていたりもして時の移り変わりを感じるが、そんな中、気になるお店ができたと知り訪ねてみた。

 折原商店。なんのお店かと言うと・・・表には駄菓子やベーゴマ、紙風船などの懐かしいおもちゃワールドが広がっている。 だが、辺りをよく見てみるとビールケースを積み重ねたテーブルが並んでおり、店内に進むと大きな冷蔵庫に並ぶ酒、酒、酒。そう、折原商店はたくさんの日本酒を扱う酒屋さん。しかも、角打ちと言って、冷蔵庫に並んでいるお酒ならどれでも有料で試飲することができるという、何だかとても気になる酒屋さんなのだ。 建物の上の方を見上げてみると杉玉もぶら下がっている。

 ところで角打ちという言葉を、みなさんはご存知だっただろうか? 私は、炭鉱の町で生まれ育ったこともあり、炭鉱で汗水たらして働いたオヤジ達がその日稼いだお金を持って角打ちで酒をあおっていた、なんて話を聞いたことがあったため、少々荒っぽいけれど人間味あふれる世界を想像してしまった。 しかも、門前仲町にと聞くと、何となく納得できるような気さえしていた。

 そんな私の想像が当てはまっているのか大はずれなのか、まずはお店に入ってみなくては。 「こんにちは」と、私は約束の時間ちょうどに中へお邪魔した。中には長い髪の女性がひとり。

「店長は今、配達から戻ってきますので」とのこと。「じゃあ、お店の中を拝見させて頂きますね」といって、私は冷蔵庫に並ぶ沢山のお酒の銘柄を見てみることにした。 知っているものもあるけれど、9割が知らないもの。 ただ、どのボトルのラベルもなんとなく自信ありげに見える。 美味しそう。未知の世界が私を手招きしている。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/