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日本一小さな学校を設立した元高校教師の自伝本を、『永遠の0』の三浦貴大、ドラマ『問題のあるレストラン』の松岡茉優ら注目の若手キャストで映画化した『サムライフ』(公開中)。先日、本作の主人公のモデルとなった長岡秀貴さんに話を聞いた。

長年の夢だった「理想の学校」を作るために高校の教師を辞職。そして、退路を断つためにマイホームや高級外車を購入して貯金をすべて遣い果たすという破天荒な行動に打って出た、当時の長岡さん。もう一度お金を貯めるためにショットバーを開業し、さらに映画の原作となった自伝本を執筆・発売した。

「26歳で4000万円の借金を抱えることになりました。でも、お金は返そうと思えば、いつでも返せる。自分の本気度をみせるために、(貯金で)家を建てて、外車を2台購入し、ゼロからスタートをきった。そのときに結婚もしたので、しばらくは専業主夫をやっていました。その家にいる期間、引きこもりの青年たちの心情を考えることができました。金もコネもない中、人のために生きようという覚悟がありました」

学校を作るために、学校を辞めて、そしてバーを開店させる。お金を全部使って、またお金を貯め始める。誰もが「教師を続けて、貯金を夢の資金にあてたら良いのに」と思うはず。

「学校を作るために先生をやめるとか、まわりから『変だな』と言われて、いろんな噂をたくさんたてられました。道を歩いていても、誰かが立ち話をしていたら、『自分のことを話しているんじゃないか』と考えるようになった。でも同情はされたくなかった。そもそも、お金に対する怖さを僕はまったく持っていなかったから。先ほどもお話したように、本気度をみせたかったんです」

バーで働く一方で、さまざまな問題を抱える少年少女に会いに行き、引きこもりなどを誘発する家庭の実情を知っていった。

「今は20代、30代の引きこもりも増えている。その原因はやはり親子関係にあります。父親は無関心、母親は過干渉という場合が多い。特に母親の過干渉は、教育の中でも“メンタルハザード”を有為している。そこで生まれる子どもたちの怒りが、母親に向かう。母親は守りに入り、辛い社会に我が子を出したくなくなる。子どもたちの家庭を訪問していると、それが本音として語られるんです。つまり、家族全体を支援していかなければならなくなるんです」

長岡さんを慕う、かつての教え子たちに支えられて、2012年、彼が創立した「侍学園 スクオーラ今人」はNPO法人として認められた。

「この映画を観ると、『明日から何かを変えられる』と思えるはず。だけど、実際は映画としては伝えられない、もっと強烈な家庭環境もたくさんある。本作をきっかけに、そのことを知って欲しいです」

映画『サムライフ』は全国公開中
◇公式HPはこちら


取材/文・写真 田辺ユウキ(映画評論家)

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田辺 ユウキ
田辺 ユウキ
1979年生まれ。関西を拠点に映画評論家としてレビューやインタビューの執筆ほか、また映画と音楽のプロモーターも務める。2014年に大阪市映像事業「CO2」プロデューサー就任。「大森靖子映画祭」「いずこねこ 最後の猫トーク」などイベント企画も行う。