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 王子稲荷神社のある東京都北区岸町は今でこそ東京都内だが、江戸時代、江戸市中ではなく遥か郊外であった。 それでも、江戸市中から絶えることなく参詣客は訪れ、貨食舗(りょうりや)が軒を連ね、江戸の奥座敷とも言う大変な賑わいだったと言う。 1838(天保9)年の『東都歳時記』には初午祭りに付いて次のように書かれている。

「東都稲荷の社は前に記すごとくあまたなれば、ここにはその雄なるを挙ぐるのみ。(中略)王子稲荷、別当金輪寺、関八州稲荷の司なりといへり。前日より詣人群れをなす」と、数ある稲荷の社の中でも筆頭で紹介されているのが、日比谷稲荷でも烏森稲荷でも、杉森稲荷や三囲稲荷でもない、王子稲荷神社だ。

 この盛況さは昭和の時代まで衰えることなく続き、日本鉄道会社が上野~王子間に臨時列車と往復割引切符まで出していたと言う。 しかし、現代に生きる私は、正直なところ王子稲荷神社に出かけたこともなければ、メディアで取り上げられているのも見たことがない。

 昭和まで続いた賑わいが今も地域に受け継がれているのか、二月の午の日、私は王子を訪ねてみた。 王子と言う場所へ行くのはこれが人生二度目。 一度目のことはまた後で書くとして、まずは王子稲荷神社へ。 王子駅の出口を間違えなければ一本道を歩いてすぐだったのだが、反対側に出てしまい、なおかつスマホのGPSの不調によって危うくバスに乗りそうになった。

お稲荷さんのキツネに化かされかけた?なんて思いつつ、森下通り商店街に軒を連ねる露店の中を歩いた。 ベビーカステラの甘い香り漂うここがもう王子稲荷の初午祭り、別名「凧市」の始まりと言うわけだ。

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諸岡 なほ子
諸岡 なほ子
福岡県大牟田市出身のタレントで、現在、一児の母。作詞家(MONA)としても活動。趣味は読書、散策、落語鑑賞、お祭見物&参加。世界遺産検定2級取得。TBS系「世界ふしぎ発見!」のミステリーハンター、MBS「住人十色」訪問者など多数出演。著書に『地球のどこかの秘境から』(実業之日本社)。
オフィシャルブログ http://ameblo.jp/nahoko/